中国の代理人かと思いきや、時の流れは関係不変を許さぬようだ。パキスタンに限らず親中国の地図が塗り変わる。
【転載開始】
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成30年(2018年)9月17日(月曜、祝日)
通巻第5833号
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
中国とパキスタンの「友誼」関係は変化。緊張状況にある
王毅外相のパキスタン訪問直後、パキスタン陸軍大将が北京を訪問
************************
このところ、パキスタンへの出入りが激しい。ポンペオ国務長官は、中国主導のシルクロード、すなわちCPEC(中国パキスタン経済回廊)に対して中国が620億ドルもの巨費を注ぎ込んだ結果、西端のグアダル港は43年間、中国が租借することになった経過を踏まえ、「IMFの救済は難しい」と述べた。直前 にトランプ大統領はパキスタンへの援助を中断した。
ポンペオのイスラマバード訪問の翌日、中国外相の王毅がイスラマバードを訪問し、イスマン・カーン首相に真意を問いただし、シルクロードプロジェクト継続の意思を確認したという。
カーン政権の誕生の後ろ盾はパキスタン軍である。
その軍の事実上のトップはバジワ陸軍大将である。そのバジワ将軍が9月16日、北京を訪問したのだ。
カーン新政権を背後で操る立場にある陸軍大将の発言には重みがあり、会談内容は公にされていないが、マハティール同様に、借金の返済が覚束ないことは、パキスタン経済の将来に暗雲を呼ぶ。収支バランスの悪化はパキスタン通貨の暴落を招く。つまりパキスタンの安全保障に直結する問題だとする認識を表明したという。
過度の中国傾斜はシャリフ前政権であり、パキスタン国民が中国を快く思っているわけではない。
そのうえ、パキスタン財界は、商都カラチが中心であり、およそ20のファミリーが銀行経営や物流を握っていてパキスタン経済を牛耳るとされる。
カラチ財界は、ハク政権(ソ連の謀略で暗殺された)、ムシャラフ政権(陸軍のグーでターでシャリフ政権を打倒し、米国と協調関係を結んだ)という軍事政権を通じて、米国とビジネス関係を深めることで成長した。
このカラチ財界も、カーン政権の後ろ盾になると想定されており、中国はこうした動きを神経質に捉え直したため、両国は緊張した状況に陥った。
▲CPECなんぞより、水資源確保のダム建設を急げ、とカラチ財界
カラチはパキスタン最大の都市であり、アラブ諸国の進出が夥しい。国際金融都市でもある。
しかしカラチ市政最大の悩みは、じつは水不足である。
1947年の水供給に比較すると、カラチの水源は6分の1に激減しており、シルクロードなんぞよりダム、浄水場建設が急がれるべきだというのがカラチの意見である。
このため9月16日にカーン首相は日帰りでカラチを訪問し、市長などから意見を聞いた。「ダムが必要なことは分かっている」としたうえでカーン首相は「中国は8万4000ケ所のダムをもち、うち5000は大規模なダムである。インドでも5000のダムがある。わがパキススタンにダムが不足していることは明らかだが、予算をダム建設に割けるだけの余裕がない」とした(パキスタンの英字紙『ドーン』、9月17日)。
▽◎◇◎み◇◇▽◎や◇◎◇◇ざ◇◎◇◇き◎◇◇◇
【転載終了】
【関連する記事】
- 【転載】【巴】IMF救済回避のため中国と再交渉 宮崎正弘
- 【巴】米中綱引きの過激化に揉まれるパキスタン 27 October 2018
- 【転載】コロンボの政変 宮崎正弘
- 【中・露】完璧な嵐が中露にも襲う zerohedge 10/12/2018
- 【中】中国自動車販売が記録的な下落を被る、歴史的崩壊の始まり Tyler Dur..
- 旧聞)【転載】安邦保険、海南航空、大連万達につづく習近平の標的はアリババ 宮崎正..
- 旧聞)【転載】中国企業の買収を締め出せ。米の呼びかけに独英仏、豪加墨が合流 宮崎..
- 【露】地方選挙でクレムリンが敗北を喫す 6 October 2018
- 【中】中国の「新シルクロード」プロジェクトが債務ジャムに突入 Tyler Dur..
- 【中】本当に中国が東南アジアを支配するか AUGUST 23, 2018