惹き句が「米外交は誇張や商業海運への脅威といった軍事的脅威の発明に左右されない」とある表記、これはちょっと本当かいなと思うが、我々に知らず知らず刷り込まれたバイアス要素を中和するには好さそうだ。
《骨子》
1。スプラトリー諸島での活動の故に南シナ海の商業海運に対する推定上の脅威について中国外部で発生している熱は退屈になりつつある。(注。用語「交流海路」(SLOC)がしばしば「商業海運」に代えてこれら討議で用いられる。だが両者は完璧に同義語ではない)。誰が「中国SLOC脅威」論を発明したのかハッキリしないが、それは仔細な精査に耐えない。此処に再考を促すかもしれない少数の考察がある。
2。第一。中国は南シナ海北方廻り海運を脅すのにスプラットリー諸島を必要としない。この係争島グループの制御無しでそうすることが容易く出来るかもしれない。中国の南洋艦隊は本部を海南島に置き、それはこの半ば閉じた海から最北端の出口を監視する地域内でフィリピンの対岸で司令的地位に位置する。中国大陸部広東省は4300kmの海岸線を持ち、この海の片側の出口を形成する。この海岸線とフィリピン海岸間の距離はおよそ800kmで、この地域は中国の海洋軍事資産の相対的に容易な範囲内にある。
3。スプラトリーグループにあるちっぽけな島や海中の珊瑚礁の大半は海南島から800km超だ。中国の軍事指導者は、これら遠隔にありちっぽけな諸島を反海運キャンペーンの基礎に使う前に、発狂しなければならないかもしれない。海運への持続的攻撃を積上げようと欲するいかなる国も、潜水艦或はいかな確保されたサプライ・チェーンからも遠隔な海中に没した珊瑚礁の大洋中の滑走路といった海洋基盤の資産を利用しようとする前に、確保されたサプライ・チェーンにより支持された陸地基盤の空の資産を使おうとするかもしれない。
4。第二。中国はほぼ確実に南シナ海を通じて例えば日本と同量の、或は可能性としてはもっと多くの石油を輸入する。BPによれば、2013年中国の石油輸入は2億8千2百万トンで対して日本は1億7千8百万トンだった。中国の輸入石油の南シナ海を通じる正確なシェアがどれだけか不明だが、これら両国は
半ば閉じた海で海運を保護することにほぼ同一の利益を有する。2015年の米政府によれば、2014年の中国石油輸入の少なくとも60%が、中国に達するに海洋東南アジアを使わねばならないかもしれない石油輸出諸国からやって来た。もっと云えば、中国経済は海洋貿易に高度に依存し、共に大陸沿岸諸都市の製造業雇用は海上輸送貿易に高度に依存する(中日間、中米間)。[斜体字強調は私]
5。第三。公海上での対商業海運キャンペーンの歴史的先例は1900年以来極端に数字が小さい。ドイツが第二次世界大戦で海上輸送貿易閉鎖と英国への海上アクセス阻止の企てに数百隻の潜水艦を失って以来、これまで何もない。1943年5月だけで、ドイツは潜水艦46隻を失った。事実、民間海運に対する現代の戦役は、(スプラットリー諸島周辺といった)公海域でよりも、船舶が港を離れ或は目的地港に近づく時か狭い海峡を通過する時かが、非常に効果的だと大半の海軍専門家が判断する。この一つの実例がイラン・イラク戦争(1980−1988)中のペルシャ湾での海運に係る戦争だった。南シナ海は域内に350万平方キロあり、ペルシャ湾域よりざっと14倍大きい。[太字強調は私]
6。衛星と中国戦艦の海底偵察の時代に、(洋上或は潜水艦の)戦闘員の何人であれ同盟国海運に多くの損害を与える前に米国及び同盟国により排除されるかもしれない。
7。もっと云えば,海上輸送貿易に従事する船舶の隻数及びトン数は今日第二次世界大戦中の何倍も多い。1940年と今との間、世界海上輸送貿易の増加はざっと1000%(10倍)で来て、向後何十年前年比で増加する。斯くして、今日の東アジア情勢は大西洋の戦闘と比肩されるあり得る中国のSLOC脅威を考えていたなら、(荒っぽい云い方をすれば)10倍少ない潜水艦に直面する10倍多い商船ということになる。仮令今日潜水艦が遥かにずっと有能であるにせよ、その分対潜水艦偵察資産もということになる。
8。第四。南シナ海(マラッカ海峡経由)はインド洋から日本向け海運にとって便利(且つより低い費用)な経路だ。南シナ海に脅威があったら,全海運が単純にマラッカ海峡を避け、ジャワの南に分岐して、スンダ或はロンボク海峡を通過し、ジャワ海に入りそれからフリピン東方のフィリピン海へ、決して南シナ海に入らない。追加される距離及び時間はずっと物要りだが紛争中のこの追加的経路の有効性がスプラットリー諸島周辺に焦点を当てた反海運戦役の価値を切り崩すかもしれない。この経路はかなり一貫して多くのより大きな石油タンカーに使われている。[太字強調は私]
9。「SLOC脅威論」が出現した一つの理由は、人民解放軍海軍の交換がその問題自身に増大する関心を払って来たからだ。海路保護任務は10年前に比べて公式の中国文書の中で今や遥かにより頻繁に述べられている。部分的な理由は中国自身が海上輸送の妨害に対して遥かにずっと変動を受け易くなったからだ。併し、もう一つの理由は人民解放軍高官が丁度西側の相方同様に国防予算により多くの資金を勝ち取る地下的梃子としてこの論争を利用しているからだ。
10。同時に、今日世界の如何なる國にとっても海運の保護は一国が単独で提供出来るものでないことを中国の指導者が知り、この見解の表現を我々は見付けることが出来る。それは共有された国際的責務であらねばならない。それこそ中国の2013年教条が述べることであり、これがその政府内で支配的な見解だろうと私は信じる。
11。スプラットリー諸島での中国の行動は、砂、岩或は珊瑚の斑点が中国領だとの信念に非常に影響されている。指導者たちは、海運の安全性を巡って世界最大の海軍とその多くの同盟国相手に衝突を可能にするかもしれないやり方で同諸島の支配が同国の軍事力投影能力を高めるだろう、と一切期待しないし或は信じない。
12。中国が強硬路線を學び始めている、そして尚學んでいる。スプラットリー諸島での強情と軍事的布石がその利益に仕えるのにかなり遠い−仮令スプラトリー・グループへの主張が防衛的であったにせよ。米国による外交は機能している。米外交は誇張や商業海運への脅威といった軍事的脅威の発明に左右されない。(止め)
***
なかなか説得的な論考だ。特に海上封鎖/海域支配に近い脅威は考え難い。然らば、何を求めて中国は争っているのか、それは領土が広がれば領海が広がり、排他的経済水域が広がり、不足する漁業資源の確保、石油天然ガスの確保が出来る、つまり経済的利益でないか。政治資本増については、現在のやり方が非常に傲慢且つ強引に見える通り、寧ろマイナスだろう。剛腕でも無法者に威信があつまらないからだ。
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