2014年09月03日

ウクライナ、イラク及び黒海戦略 Stratfor SEPTEMBER 2, 2014


 Stratforの論考だから、当然米国側での考察であることに留意(表記)。
《骨子》
1。米国は現時点でオフバランスだ。同国はシリア・イラク戦場での挑戦及びウクライナでの挑戦に直面している。どちらにも明確な対応がない。どちらの戦場でもどんな成功になるのか、貢献にどんな資源を準備すべきか、敗北の代償が制御可能かどうかも知らない。

2。この種のジレンマは全球的大国にとっては尋常でない訳でない。その非常に広い利害と権力の程度が予期せざる出来事の機会を生み出し、そしてこれらの出来事、特に異なる分野での同時的挑戦が不確実性と無秩序とを生む。米国の地理及び実力が災厄に導くことなく或る程度の不確実性を許容するが、一貫した統合された戦略の発動が必要だ、仮令その戦略が単純に立ち去り成行き任せにすることであってもだ。私は後者の提案をしているのでなく或る時点で無秩序が成行き任せにならざるを得ず明確な意図が現われねばならないと論じ立てるのだ。そうすれば、結果が両紛争に指針を与える新しい戦略地図の辻褄になるだろう。

3。米国にとって最も極めつけの問題は最も切迫した挑戦を考慮に入れた単一の統合計画を生みだすことだ。そうした計画は、統合された政治的術策と軍事計画を許す地理的に十分に一貫した作戦戦場の定義から先ず始めねばならない。米軍教条は明瞭に二面戦争戦略を離れた。作戦上、一貫した作戦重心という面で考えるのが不可欠だ。私にとって、その中心が黒海であるのは増々明瞭だ。

ウクライナとシリア・イラク
4。現在広範な潜在的重大性を伴う軍事行動の二つの活発な戦場がある。一つがウクライナ、そこではロシア人がクリミアに向う反撃を打ち出した。他がシリア・イラク地域だ、そこではイスラム国の勢力が最低限両国にある諸地域を制御する−精々レバノンとイラン間にある地域の支配−のを企図した攻撃を打ち出した。

5。多くの意味で、これら二つの戦場に繋がりはない。そうとも、ロシア人は高地コーカサスに進行中の問題を抱え、イスラム国と協同するチェチェン顧問の報道がある。この意味で、ロシア人はシリアやイラクで起きていることで快適とは云い難い。同時に、米国の注意をウクライナから引き離すことなら何でもロシア人に有益だ。その役割として、イスラム国は長期的にはロシアに反対せねばならない。しかしながら、その現下の問題は米国権力だ、だから米国を引き剥がす何事もイスラム国に有益だ。

6。だがウクライナ危機はイラク・シリア危機と非常に異なる政治力学を持つ。ロシアとイスラム国の軍は何であれ協調していない、そして結局、孰れかの勝利が他者の利益に挑戦するかもしれない。だが注意、政治的意志及び軍事力を注意深く割当ねばならない米国にとって、二つの危機が一緒に考えられねばならない。ロシア人とイスラム国には一つの危機に集中出来る贅沢がある。米国は両者に気遣いそれを和解させねばならない。

7。米国は、ウクライナ危機に対処しようとしつつ、中東への関与を制限する過程にあり続けている。オバマ政権はジハード戦士無しの統合されたイラクを創出し、ロシアに親西欧ウクライナを受容させたい。亦実質的な軍事力を孰れにも投入したくない。そのジレンマはリスク無しで如何に目標を達成するかだ。これが出来なければ、どんなリスクを引受けるのか或は引受けざるを得ないのか。

8。リスクを最小化し影響力を最大化する戦略は合理的で如何なる國の創立原理でもある筈だ。この論理に拠れば、米国戦略は代理人を使って地域の勢力均衡を維持し、それら代理人に物質的支援を提供するが、他の選択肢がなくなるまでは直接の軍事関与を回避すべきだ。最重要なことは介入の必要をなくす支援を提供することだ。

9。シリア・イラクの戦場では、米国は世俗派親西欧勢力下の統一国家を求める戦略からアラウィー派とジハード戦士間の勢力均衡を求めるものへと移動した。イラクでは、米国はバグダッド下の統一国家を追求した、そして今は最小限の米軍とクルド、シーア派及び一部スンニ派の代理人を使って、イスラム国を封じ込めようとしている。若しそれが失敗すれば、イラクに於ける米戦略はシリアに於ける戦略へと移るだろう、則ち、派閥間の勢力均衡を図るものへだ。別の戦略が実在するかは明瞭でない。2003年に始まった米国のイラク占領は軍事的解決に結果せず、2003年の繰返しが成功するかも明瞭でない。如何なる軍事行動も心中それに勢力の配分がその結果を達成するだろうとの合理的な期待の中の明確な結果で捉えられねばならない。希望的観測は許されないからだ。現実的に、空軍と地上の特別作戦部隊とがイスラム国を降伏させ或はその解体に結果するとはありそうにない。

10。ウクライナにはもち論違った力学がある。米国はウクライナでの出来事を道徳的な姿勢の顕示機会或はロシアの国家安全保障への戦略的打撃の孰れかと見た。どちらにせよ、同じ結果だった。それがロシアの基本的利益への挑戦を生みだし、ロシア大統領ウラジミール・プーチンを危地に置いた。彼のインテリジェンス機関は完璧にキエフでの出来事の予測或は管理に失敗し、東ウクライナでの広範な蜂起起動に失敗した。もっと云えば、ウクライナ人はその支持者を打ち負かしていた(日が過ぎゆくに連れて支持者とロシア部隊間の区別が増々薄れて行った)。だが、ロシア人がウクライナの現実を既成事実にしようと単純に動いていたのでないのは明瞭だった。彼らは反撃するかもしれない。だがそうしたにせよ、彼らはかつてウクライナの政策を形成していたことからウクライナの小断片を除くすべてを失うことに移動したかもしれない。それ故彼らは失地回復申出の中で恒常的に攻撃的姿勢を維持するだろう。[斜体字強調は私,異論有り]

11。ウクライナに於ける米国の政策はシリア・イラクに於ける戦略を追う。第一、ワシントンが代理人を使う。第二、物質的支援を提供する。そして第三、直接的な軍事関与を避ける。両戦略は主敵−シリア・イラクに於けるイスラム国とウクライナに於けるロシア−決定的な攻撃の積上げが出来ない,或はそれが積上げる如何なる攻撃も空軍力で鈍らせられる。併し成功するには、米戦略は一貫したウクライナ及びイラクの、それぞれロシア及びイスラム国に対する抵抗があるだろうことを想定する。それが実体化或は溶解しないなら、戦略がそうなる。

12。米国は危険な盟友に賭けている。そして結果が長期的に問題となる。世界大戦T及びUに先立つ米戦略は大規模な米派兵を以てのみ状況が操作出来る迄関与を制限することだった。冷戦期間中、米国はその戦略を変え少なくとも一部戦力の事前関与となった。これにはより良い結果があった。米国は外国の脅威に難攻不落でない。尤もそれら外国の脅威は劇的に進化するに違いないが。より早期の介入が最後の可能な一分の介入より費用が少なかった。イスラム国或はロシアの孰れもそうした脅威を米国に置きはしない、相対的な地域の勢力均衡が彼らを封じ込め得るのが非常にありそうだ。しかし若し出来ないなら、危機は米国に対するもっと直接的な脅威に進化するかもしれない。そして地域の勢力均衡を形成するには少なくとも何らかのリスクの行使と引受とを必要とする。

地域の勢力均衡と黒海
13。ルーマニア、ハンガリー或はポーランドのような諸国にとって合理的な動きは、外部からの重大な保障を持つことでなく、ロシアを受容することだ。公平であろうがなかろうが、唯一米国のみがそうした保障を与え得る。同じことがシーア派やクルド人にも云い得る、その両者とも米国が近年放棄した者で、自分自身で何とか出来ると想定したものだ。

14。米国が直面する問題は物的或は概念的に如何にそうした支援を築くかだ。二つの明確で繋がりのない戦場があるように見え,アメリカの軍事力に限りがある。状況が説得的な保障を排除するように見えるかもしれない。だが米国の戦略的概念はこれらを明確な脅威と見ることから離れて同じ戦場の違った様相として見ることへと進化しなければならない、則ち黒海だ。

15。我々が地図を見るとき、我々は黒海がこれら地域の地理的臍だと気づく。同海はウクライナ、ヨーロッパ・ロシア及びコーカサスの南部前線で、そこではロシア、ジハード戦士及びイランの力が黒海に収束する。北部シリア及びイラクは黒海から650km未満にある。

16。米国が北大西洋戦略を持ったことがあった。カリブ海戦略、西太平洋戦略等も。これは単純に海洋戦略を意味しなかった。寧ろ、それは戦略的補給品、部隊及び空軍力の配送を提供する海軍力に依存した権力投影の結合された武器システムとして理解された。それは亦、一つの軍或は少なくとも司令部構造が多方向に補給品を供給出来る設定の中に、その勢力を置いた。

17。米国は余剰資源を必要とする二つ以上の無関係な問題或は単一の統合された解決策の孰れかとして対処され得る戦略的問題を抱える。ロシア人とイスラム国とが自身を単一の戦場の一部と見ないのは本当だ。併し相手方は米国にとっての作戦戦場を定義しない。戦略工夫の第一歩は、戦略家が分離ではなく勢力の統合、分割ではなく支援の統合という面で考えるのを許す地図を定義することだ。亦それは戦略家が統合された戦略の一部として地域関係を考えるのを許す。

18。瞬時、ロシア人が再びコーカサスに介入することを選択する、ジハード戦士がチェチェンやダゲスタンから出てグルジアやアゼルバイジャンに動く或はまたイランが北方に移動するのを選択すると想定してみよ。コーカサスの出来事の結果が米国にとって大いに問題となるかもしれない。米国の意志決定者が二つの現戦略問題を概念化出来ぬと思える現在の戦略構造の下、そうした三番目の危機が彼らを圧倒するかもしれない。だが、私が大いなる黒海流域と呼ぶだろうものの確保という面で考えることが現在の思考演習に枠組を与えるかもしれない。黒海戦略が黒海東岸のグルジアの重大性を定義するかもしれない。さらに一層重要なことに、それがアゼルバイジャンを米国戦略で持つべき重要性の水準に引上げるかもしれない。アゼルバイジャンなかりせば、グルジアに重みは殆どない。アゼルバイジャンがあれば、コーカサス高地のジハード戦士に対抗力があり、或は少なくとも緩衝となる。アゼルバイジャンが論理的に大いなる黒海戦略の東の錨だからだ。

19。黒海戦略は亦米国にとって二つの重要な関係の定義を強制するかもしれない。最初がトルコだ。ロシアを脇に置けば、トルコこそ主要な生来の黒海権力だ。同国は大いなる黒海流域中、則ちシリア、イラク、コーカサスに利益を持つ。米国とトルコとの戦略を合致させることがそうした戦略の前提条件かもしれない、謂は両国が真剣な政策移行をしなければならないかもしれないということだ。明示的な黒海中心戦略が米土関係を前面に押し立てるかもしれず、合致失敗は両国にその戦略的関係を再検証する必要有りと教えるかもしれない。この点で、米土関係は衝突する現実のシステム的回避に基づくように見える。黒海を中心物にすれば、現実主義的戦略創出に於いて滅多に有益でない逃避が難しくなるかもしれない。

ルーマニアの中心性
20。第二の極め付きの国がルーマニアだ。モントルー条約はトルコにより制御されるボスポラスを通って黒海へと海軍力を無制限に通過させることを禁じる。しかしながら、ルーマニアは黒海の国であり、制限適用がない。だが海軍戦闘力は半ダースのコルベット艦でバックアップされたいくつかの高齢化フリゲート艦に集中している。地域、特にウクライナに於ける作戦用機の潜在的基地たることを別にすれば、黒海で重大な海軍力建造−潜在的に水陸両用船を含む−にルーマニアを支援することがロシア人に対する抑止力を提供し、ルーマニアと協力するようトルコに動機づけし、それにより米国と協同するかもしれない黒海での出来事を形成する。伝統的なNATO構造はこの進化を生き延び得る、仮令NATO大半が黒海流域にに面する諸問題と無関係だとしてもだ。どのようにシリア・イラク劇が終ろうと、ウクライナやヨーロッパ半島とのロシアの関係の将来には二の次だ。ポーランドは北欧平野のアンカーだが、今のところの行動は黒海に或、そしてそれがルーマニアをヨーロッパ半島で極めつけのパートナーにする。ロシアがウクライナでその立場を再獲得したら同国が最初の圧力を感じるだろう。

21。私はしばしば、Intermarium、海洋間の陸地という観念に基づく連携の出現−そして出現の必然性−について書いて来た。それはバルト海と黒海の間に伸び、新しく断言するロシア封じ込めを企図する連携になるかもしれない。私はこの連携が東方はカスピ海に伸び,トルコ、グルジア,アゼルバイジャンを取り込むと想定して来た。ポーランドからルーマニアへの線は既に現れつつある。黒海両岸に於ける出来事を所与とすれば、この線の残りが現われるだろうことは明らかに思える。

22。米国は冷戦の政策を採用すべきだ。それは四つの部分から成る。第一,盟友は脅威に対応する防衛と実体的な勢力の地理的な基礎を与えると期待された。第二、米国はこの構造を支えるのに必要な軍事的及び経済的援助を提供するものだった。第三、米国は米国関与の保証及び即時支援として一部勢力を事前配備するものだった。そして第四、ワシントンは全米軍が同盟国防衛に関与することの総体を保証するものだった。しかし、最後の保証を充足する必要は決して起こらなかった。

23。はっきりした戦場へと分断される地域の観念を所与として、相互に支持的でもなければ米国に地域に於ける権力を許すのでもない大いなる黒海流域に米国が持つのは不確実な同盟構造だ。米国が援助を提供しているが、此れ亦一貫しない基礎の上でだ。一部米軍が関与しているが、その任務は不明確だ。彼らが適所にいるのか不明確で、地域政策が何なのかも不明確だ。

24。斯くして、当面の米国政策は一貫していない。黒海戦略は単に名前だけだが、時に名前が戦略的思考を集中させるのに十分だ。丸で違う惑星上にあるかのようにウクライナやシリア及びイラクという面で米国が考える限り、一貫した戦略が要求する力の経済が決して達成されないだろう。黒海を単一で多面的且つ緩和した地域のピヴォットという面で考えることが米国の思考を固定出来る。だがアメリカの戦略に一貫性を与えるものはともかく価値観だ。

25。広義の大いなる黒海流域は既に米国の軍及び政治関与の目的だ。ただ軍、政治或は公共及びメディアの計算にそうした面で認識されていないだけだ。そうなるべきだ。認識を急速に出現する現実と合致させるだろうからだ。(止め)
***
 大いなる黒海流域とう新しい臍の地域概念提示は面白い。
posted by 三間堀 at 14:10| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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