「パキスタンは中国におよそ600ドルの負債をかかえ、年内の返済が90億ドルある。誰が見ても返済不可能だから、デフォルトを引き起こすが、となればIMFの救済パケッジにより、財務内容がすべて洗い出され、経済政策、とりわけ金融と財政政策はIMF管理になる。つまりパキスタン経済はIMFが指導する」。ーと「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成30年(2018年)10月16日(火曜日)弐が言うパキスタン情勢。表記はそれを米中綱引きと見る、以下つまみ食いしておく。
《骸骨》
1。首相イムラン・カーンが10月10日に発表した。パキスタン政府はIMFから借りねばならなくなった、同国の外貨準備が先月84億ドルに下落したからだ。カン曰く、「友好国」からの金融援助をも求めるだろう。彼が意味したのは中国とサウジアラビアだ。
2。さらに悪化する支払い収支尻危機のさ中、パキスタン政府は推定120億ドルを喉から手が出るほど必要とし、さらなる金融援助を求め中国を見ている。しかしながら、中国と距離を置き法外な提案中国パキスタン経済回廊に随伴するプロジェクトを巻き戻すことは米国からの圧力下にある。
3。米国務長官マイク・ポンピオが効果的にカーン政府へ7月末に警告した。いかなるIMF貸付金もパキスタンの経済的中国依存削減を条件とするだろう、と。「間違ってはいけない。我々はIMFのすることを監視し続けるだろう。IMFの納税されたドルには何ら正当性がないしーそれに随伴するIMF資金の一部たるアメリカ・ドルー中国の債券保有者或いは中国自身を救済しに行くものではない」。
4。CPECは中国のインフラ戦略ー一帯一路(ユーラシア陸塊を連結し同国を孤立化させ包囲する米国の努力に対抗するもの)ーの極め付きな要素だ。ワシントンは米国内増幅する戦争太皷のメディアと中国を即ち諸国を「債務の罠」に誘惑すると問責する国際メディアとを含む全戦線で一帯一路に対する攻撃を累積している。
5。米国からの圧力に直面して、パキスタン政府は金融の重荷を減らし戦略よりも寧ろ経済問題にプロジェクトの焦点を当てる、CPEC条件の「改作」を求めている。来月パキスタン首相として中国に初訪問する準備として、カーンが拘っているのはCPECをインフラから農業、仕事の創出や外国人投資へと強調点を移すことだ。
6。今月初め、シィーク・ラシッド、鉄道大臣曰く。CPECの一部たるパキスタン内鉄道プロジェクトの費用が引き下げられたが、さらに削減せねばならない。主たる鉄道プロジェクトは南部のカラチから同国北部ペシャワールへの1,872kmに及ぶ幹線の大改良だ。
7。「我々は鉄道プロジェクト費用を84億ドルから62億ドルに引き下げた。それを更に42億ドルにまで引き下げるのが私の望みだ」とラシッドが述べた。「私はCPECの最大の支持者だが、同時に鉄道の重荷を極小化したい」。
8。米国を名指しさえしないけれども、王が端的に警告した。「中巴関係に不調和を齎す或いは介入しようと企てるどんな陰謀も郵政にはなるまい」。中国とパキスタンは経済回廊を振興し、貿易を拡張、それに貧困を削減する「全面的な」努力をし続けるべきだ、と彼は宣言した。
9。中国もまた他の戦線でパキスタンとの紐帯強化を求めている。9月、パキスタン陸軍司令官、将軍カマール・ジェイヴド・バイワとの会談で中国主席習近平曰く。「パキスタンは時の試練を経た我々の友好国であり、パキスタン陸軍はこの持続する関係に向けた軸足的役割がある」。彼はパキスタン陸軍を称賛して宣言した、「中国はパキスタンを戦略的パートナーとして支援し続けるだろう」。
10。パキスタンだけが一帯一路プロジェクトの修正を求めている国でない。マレーシアは260億ドルの中国資金プロジェクトを停止或いは解約した。一方ミャンマーはベンガル湾の中国資金港湾プロジェクトの重大な規模縮小を交渉中だ。疑いなく、米国とその同盟国が中国案切り崩しの背景に圧力を行使している。
11。トランプ政権が中国との対決を熾烈化するので、パキスタンのような国々はワシントンと北京との関係を均衡させるのが益々困難だと気付きつつある。この緊張した術策は地政学的緊張と戦争危険の高まりの鋭利化のもう一つの指標だ。(止め)