2017年11月29日

【転載】北朝鮮、ICBMを日本海に飛ばしたが 宮崎正弘の国際ニュース・早読み


 「首相官邸の発表によると、発射は午前3時18分ごろ。北朝鮮西岸より弾道ミサイル1発が発射され、4時11分ごろEEZ内に落下したもようだとしている」(ブルームバーグ)。明確に国益侵犯だ。宮崎正弘の意見を見ておこう。
【転載開始】
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)11月29日(水曜日)弐
         通巻第5528号   
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 北朝鮮、ICBMを日本海に飛ばしたが
  新型か「火星型」は不明。ロフテッド軌道。4000キロを「遙かに超えた」
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 2017年11月29日午前3時18分。北はまたまた新型のICBMを打ち上げ、400キロをこえる上空から日本海のEEZ領海に落下した。
 打ち上げから一時間余、小野寺防衛相は5時に防衛庁で記者会見し、六時前に安倍首相が官邸で記者会見している。

 この対応の迅速さをみれば、前夜から打ち上げ予測が確実であったことが分かる。
 前夜、ルクセンブルグ大公との夕食会を終え、首相はそのまま官邸に宿泊していることからも、万全の対応態勢にあった。

 他方、中国は北朝鮮国境を守備する北部戦区で大規模な軍事演習がなされ、零下17度の極寒状況のある内蒙古省でも、冬の軍事作戦を想定した訓練が行われ、また丹東から北朝鮮の新義州にかかる橋梁を「工事」のため一時閉鎖する措置をとるとした。

 日本時間午前六時ごろ、トランプ大統領が記者会見し、「制裁を最大につよめていく方針に変わらない。この状況にわれわれは対応している」と語気強く語った。

 これで日米中の即応体制は観測できるが、対応は記者会見だけであり、日本の防衛態勢の能力向上など、肝腎の話は何も出ていない。これで「万全の態勢ができている」というのは耳の聞き違いかと思った。
       □◇▽み◎□◇◎や△□◇ざ□▽◎き◇□◎ 
【転載終了】 
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2017年11月22日

【米】戦争、核戦争と法律 George Friedman Nov. 20, 2017


 仮にトランプ大統領が核攻撃を命じたにせよそれが違法なら軍は従わなくていい、と言う。対北朝鮮核攻撃があるかもしれない状況下、これはアメリカの行動を占うに重大な疑問だ。表記は上院での質疑の模様。副題は「上院議員は正しい疑念を質ねているが間違った人々についてだ」。
《骨子》
1。米上院が先週、核兵器使用の大統領権限に関する公聴会を開いた。同公聴会の切っ掛けは北朝鮮状況と大統領ドナルド・トランプが北朝鮮に対して仮借ない核攻撃を打ち出すかもしれないとの一部にある恐れだ。上院議員たちの尋ねていた質問はどんな大統領権限が単独で核戦争発動できるかだった。

2。これは長く炎上してきている質問だが、数十年にわたり意図的に無視されてきたものだ。だがこの質問は核兵器使用だけでなく議会承認なき全ての類の戦争を発動する大統領権限にも関連する。憲法は、大統領が武力の最高司令官だと述べる。また議会には戦争布告の権限があると言う。大統領は軍司令部の中にいる、しかしながら、戦争に赴く権限は議会に残る。

3。でも米国史を通じて、大統領は軍事衝突、特に些少なものの発動を自分で行ってきた。そして第2次世界大戦以来、これが大きな軍事衝突にさえ拡張されてきた。この時期、米国は正式な宣戦布告ー議会により承認されねばならないーなしで幾つかの軍事衝突に従事してきた。この正式な布告なしなら、議会承認は不必要だ。米国が宣戦布告なしで戦った最初の大きな戦争は朝鮮だった。大統領ハリー・トルーマンは同戦争への米国従事が国連により授権された警察行動だと言い争った。米国が国連に加盟したのは議会により批准された条約によるものだった。それ故、彼が言いたてた、軍事行動に授権する国連への参加合意によって朝鮮での戦争に従事することを議会が承認したと。

4。その理屈は私には少々曲がりくねって見える、だが司法界と下院がそれを受諾した。これが国連により授権されない宣言なし戦争への米国従事に扉を開いた。ヴェトナムが戦われたのは宣戦布告なしだった。尤もトンキン湾事件後議会は大統領リンドン・ジョンソンが米国関与への議会の授権と解釈した決議を通した。同決議は東南アジアで米軍を保護するのに必要ないかなる手段の使用を大統領に授権した(トンキン湾決議前に米軍が同地域に派遣されており戦闘に従事していたことが注意されるべきだ)。加えて、アフガン戦争、イラク戦争、或いはリビアからシリア、ニジェールなど近年戦われてきたどんな小規模戦争でも宣戦布告されなかった。

5。これら作戦全部における論争は憲法が宣戦布告要件に関して曖昧であり、最高司令官たる大統領の地位が戦争遂行権限を与えることだった。これら作戦用予算の議会承認で十分なことだ。大統領たちは宣戦布告を欲しなかった、何故なら彼らは公衆に些細な介入を戦争と考えさせたくなかったからだ。ジョンソンは政治的理由で彼がしていることの重大性を極小化したかった。大統領ジョージ・W・ブッシュがアフガニスタン侵略を決した時には、宣戦布告が時代遅れに見えた。裁判所はこれを政府のほかの二部門間の政治的事柄と見なした。下院は特権である宣戦布告の投票を要求しなかった。そして公衆はそれを受諾したように見えた。

6。核兵器が状況の複雑性に加わった。冷戦中、ソヴェト・ミサイルが米国に着弾する30分超前の警告などあり得なかったかもしれない。だから宣戦布告は不可能だった。大統領が予防的攻撃をせねばならぬと感じるなら、最初に議会に行くことが明瞭に驚愕要素を除去するかもしれない。大統領はそれ故に核攻撃への対応或いは攻撃の始動の唯一権限を持った。キューバ・ミサイル危機の間、ソヴェト意図についてのインテルに必然的に依存していたかもしれない核攻撃を発動するのに議会の授権を大統領は求めなかった。

7。大統領は第2次大戦以来、裁量で部隊を戦闘に送り意のままに核兵器を使う実際上の権限を持ってきた。先週の議会審問は上院議員が議会に問われるべき質問を軍人に尋ねていたという面で奇妙だった。彼らは将軍たちに大統領により与えられる違法な命令に従うかと尋ねた。軍事的に行動する大統領の決定が違法かもしれないことを意味した。そしてこれが別の重要な疑問を提起した。大統領により命じられたどんな行動が違法と考察されるかもしれないのか。何が合法で何がそうでないのかを定義するのは将軍たちのではなく議会の役割であるべきだ。

8。彼らが対処している状況は70年を超えてそのままだが、議会は一貫して黙って先例を次々作ってきた。これは戦争について決定をなすドナルド・トランプの適格性についての疑念でなく、寧ろ戦闘従事の前提要件たる宣戦布告への議会固執の欠如についてだ。核戦争の場合、議会指導者たちは核兵器が使われるかもしれないことを知らされるべきで、これら指導者たちがそうした兵器発射に授権しなければならないことを議会が要求したかもしれない。

9。何であれ、公聴会は第2次大戦以来大統領が回線の議会責任を奪ってきた現実問題を避けている。即ち、別の言い方なら、議会がその責任を放棄してきている。この点で、大統領は意のままに軍事行動できるという長年の慣行になった。そして軍隊はどんな放擲命令でも最高司令官に服従せねばならない。最高司令官としての大統領命令が、戦争犯罪でもないのに、違法たり得ると見るのは困難だ。北朝鮮の核施設を攻撃するのは戦争犯罪か。議会はその疑問に答えるべきだ。

10。開戦に向かう際のその役割を回避或いは極小化するために議会が採用してきた全戦略は誰が核攻撃を命令して良いのかという狭い疑問から発する。憲法は特定して宣戦布告を述べる、そしてこれらの布告には単なる決議に欠如する権限と間違いようのない重大性がある。併し、その時、決議と核戦争への責任回避に含まれる曖昧性を享受してきた。今の同主題への関心は適切だが、戦争責任を大統領に押し付ける議会の願望は公聴会の焦点たるべき問題だ。(止め)
***
 どこの国も政治屋だらけで嫌だねえ。でも自分の意見を率直に言う奴のいるのがアメリカの救いか。
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2017年11月20日

【泰】貧者が益々貧乏になっているタイ国 NATION November 19, 2017


 表面的栄華の裏には膨大な数の貧者がいて、皆が貧乏故の「貧しさの平等」に僅かに慰められている。半分近くの国富を上位1%が占めるこの国はジニ係数で言えば革命が起きてもおかしくない状況だ。とはいえ、外見上ゆったり暮らしているように見えるのは、生活費の低さに加え少なくともこれまでは拡大家族制度による相互扶助のお陰だ。だが産児制限が日本以上に成功したこの国は、少子高齢化の影響でその相互扶助が崩れかかっている一方、それをカバーする社会政策が乏しい。タクシンが選挙に圧勝したのはその貧困をカバーしたからだ。今回軍政はそうした極貧層を対象に福祉カードなるものを考案し実施した。交通費1500バーツ/月、その他生活費補助300バーツ/日を支給するものだ。プーミポン大王の贅を尽くして荘厳された火葬の儀からは窺えないタイ人庶民の暮らしぶりを見てみよう(表記)。「学者曰く、現行の福祉政策は反対効果ありで、富者を益々富ます」。

《骨子》
1。貧者が一層貧しくなっており、一方福祉及び社会事業への政府の政策方式の所為で富者がさらに富んでいる。昨日タマサート大学で開催された市民国家政策に係るセミナーに出席した学者の言だ。

2。公式統計が示すのは、貧者よりも富者が政府の政策からより多くの利益を獲得する向きにある傾向だ。それは貧困と戦う政策意図と鋭い対照をなす、と農業(カセサート)大学経済学教授デカルト・スクムノが言った。

3。デカルトは国家社会開発局からの統計を引いた。それが示したのは貧困線未満の人数が2015−2016年にほぼ20%増加したことだ。

4。2,920バーツ/月未満の所得しかないとして定義される、貧困に暮らす人々が昨年は581万人強いた。「統計から、また我々は貧者の数が上昇中と気づいた。貧者の日常支出、特に食料価格が上昇しているからだ」。

5。「併し他方、彼らの所得がより低くなりつつある、特に農業部門にいる貧者の所得がだ」と彼は自由人民党後援のセミナーで教えた。比較上、デカルトが語った、統計が示したのは「タイ社会の最富裕の人々が…増加した所得を持つ、特に3年前のクー後だ」ということだ。

6。デカルトが警告した。この傾向はタイ社会における深刻な問題を示す。それは明らかに社会における構造的問題と市民国家の政策が状況を一層悪化させていることを見せつける。

7。彼曰く。市民国家システムが社会の最高所得グループを構成する大コングロマリットに、貧者を助ける意図の政府プロジェクトにより貧者にするよりも、ずっと多くの経済的利益の獲得を許した。

8。政策は富者に貧者に付け入る機会を与えている、と言う。

9。別の学者、スラウィット・ワナカイロイ、農業大学農学部教授は間違いを照明するものとして市民国家の農業政策を指摘した。政策はタイ国農業を近代化し農民所得を高める意図だ、と彼は語った。

10。実際上、しかしながら、大農場政策或いは植栽多様性保護法といった数多くの政策及び法律がその代わりに農業部門の大コングロマリットが農民把捉を緊くし彼らに強制的にコングロマリット供給品だけを使わせるのに役立っている。デカルト曰く、福祉は貧者を助けるのにさほど役立たない。政府は今現代史上最大の予算赤字に直面しており、総歳入の23%まで占めている。彼曰く、政府予算はもっと多くの資金を貧者助成に振り向ける代わりに多くの事項で過剰支出している。

11。政府が筆頭に掲げる重要政策の一つが年間所得が毎年100,000バーツ未満の低所得者を助けることだ。

12。社会福祉カード・システムが以前国家福祉を得るため登録していた全国合計1,100万人超のために最近導入された。

13。これらカード保有者は取り分け、政府後援の小売店での必需品購入並びにバンコクのスカイトレイン、地下鉄及びバスに係る無料だが限定的な公共輸送に関して、補助金享受の資格を与えられる。
14。年間30,000バーツ未満の所得者はまた長期的に貧困と取り組む手段としてより良い仕事を獲得する機会増大のために職業訓練を得るだろう。(止め)
***
 軍政はタクシン系政党の政府が評伝獲得手段にポピュリスト政策(代表が高米価維持政策)を取った、と批判し続けているが、現実には程度問題ありだが同種政策を自身も実施した。米だけじゃない、生ゴム(これは自己の支持基盤であるタイ南部生ゴム農家の要求が強かった)、サトウキビにもだ。

 方々前回同様軍事支出をお手盛りし、最近では軍備増強、兵器のお買い物に興じている。ともかく支出チェックがなく(議会はメクラ判装置)、財布の紐がゆるゆるだ(裏には当然腐敗があろうが)。プラXXXには44条の絶対的権力はあるし国家腐敗防止委員会は元々お仲間だ。裁判所も同じと来たら、野放途を止める者がいない。

 今や豊かだった国庫の有り金を使い果たしつつある。勿論、長年の希望だった鉄道整備といった評価できるものもあるのだが。これ以上説明しがたいが、容易に推測できるだろう。
posted by 三間堀 at 17:21| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【泰】東南アジアの経済ブームに乗るかも知れないタイ国 bloomberg 2017年11月17日


 タクシン政権でタクシノミクス企画立案実施に活躍したソムキットは前回クーでも経済産業担当として活躍し、現在軍政下同じ業務を担っている(尤もプラユットは政権維持に不足と思っているらしい)。タクシン、インラック共に政権を追われたが、タクシノミクスが踏襲されている。にも拘らず、経済成長率という面ではかつての「東南アジアの優等生」から劣等生へと転落して長い。表記はタイ国の停滞感を払う記事だ。
《骨子》
#ブルームバーグの要約
・エコノミストは第3四半期のGDP成長率を3.8%と見る、2013年以来の最良だ。
・輸出増大と観光とで通貨の上昇を乗り切った

#本文
1。東南アジア中に広まった経済ブームが最終的にタイ国へと越境してきた。

2。この10年間近隣諸国に立ち遅れてきた経済が、バーツ上昇があったにせよ、前四半期は4年超のうち最速の調子で成長したと予測される。楽観的になるには理由がある。輸出が二桁%増を記録し、国王プーミポン・アドゥンラヤデートの1年長の服喪期間終了が消費展望を増進するからだ。

3。「我々は益々楽観的になりつつある。輸出の回復が予想よりももっと持続的だからだ」とユージニア・、ヴィクトリーノ、シンガポールにあるオーストラリア&ニュー・ジーランド銀行グループのエコノミストが述べた。「依然として大量の挑戦がある、特に私的投資に「群いる」政府の無能だ。それが本当は経済を再活性化するかもしれない」。
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4。GDPは第3四半期前年比で多分3.8%成長した。9人のエコノミストの中位数評価のブルームバーグ調査による。データによれば、2013年第1四半期以来最速かもしれない。政府が11月20日正式数字を発表するだろう。

5。東南アジア経済はヴェトナム及びフィリピンでの拡大の速まりで成長再上昇を享受している。マレーシア経済は第3四半期3年超のうちで最速の成長した、金曜日にデータが見せつけた。

輸出
6。タイ国の輸出はバーツの強さに見合っていて、9月までの5ヶ月毎に10%超の上昇を記録した。バーツはアジアの最良実績国の中で2017年に8%超上昇した。「輸出における広範な基盤の上昇が強いバーツに拘らず続いてきた」とティム・リーアラファン、スタンダード・チャータード銀行のバンコク本拠のエコノミストが述べた。「バ−ツは財産流入よりも寧ろ健全なマクロ経済的基礎条件により駆動されてきた。そしてこれらは今年の残りの間と2018年、通貨を支持し続ける筈だ」。
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7。政府は今月年末の買い物のために減税を承認して、東武海岸線に沿ったインフラと先進的産業とを築く1.5兆バーツ計画に乗ったばかりだ。タイ国銀行はその鍵たる金利を2015年来の記録的低さに据え置いてきた。

8。タイ国ー2014年以来軍政下にあるーは来年の選挙への途上にあり、展望に不確実性を挿し挟んでいる。一部分析家は成長の高まりを期待するけれども、他の者は政治的分断がもう一度炎上するかもしれないと懸念する。(以上)
***
 選挙後政府の道筋を決める20年!計画(罰則付き)の策定が始まった。激変する世界情勢を読み込むことなど到底できないのに軍政の希望を固定化させる措置だ(国民の参加はない)。土台不能なものと私は思っていて、選挙したところで内閣はこの路線を踏み外せない(つまり軍政の継続)のに、国民はどこまで覚っているか。そして反対運動どころか言論発表さえ禁じられている。独善的に国民から遊離した案が出来上がる。

 合法的に政策を変えさせる機会さえないタイ国民。新憲法の国民投票で賛成したことを大いに悔やむ日がやってくるのは必定だ。
posted by 三間堀 at 11:36| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年11月18日

【転載】債務不履行に陥ったベネズエラに中国、露西亜が助け舟 宮崎正弘の国際ニュース・早読み


【転載開始】
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)11月18日(土曜日)弐
          通巻第5509号  
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 債務不履行に陥ったベネズエラに中国、露西亜が助け舟
  沈むボロ舟に手を貸して、自ら債権を放棄するという無謀さも政治的配慮から
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 週初、筆者はカンボジアにいたが、プノンペンの空港のラウンジに置いてある『ファイナンシャル・タイムズ』(11月16日付け)を見たら、「ベネズエラ、債務不履行の危機」と大見出しが踊っていた。
小誌が昨年から予測していた事態で、とりたてての衝撃はないのだが、最大の債権者である中国がどうするのか、というポイントに関心があった。

 ベネズエラの対外債務は650億ドルとされ、このうち、判明しているだけでも420億ドルは中国が貸与した金額である。
420億ドルは邦貨換算で4兆7500億円弱、日本の防衛費の90%程度に匹敵するから、不良債権となれば中国の損出は巨大になるだろう。

 在米華字紙の『多維新聞』(11月18日)が「その後」を伝えている。
ロシアは償還期限が来た31億5000万ドルの返済延長に応じた。六年間返済を猶予し、その後、十年で返済という条件だという。

 ロシアの言い分は「トランプがベネズエラを制裁した結果であり、ロシアは米国の『インド・太平洋』戦略に対応するためにも、友好国の破産を放置できないからだ」と同紙は分析している。

 中国も返済繰り延べに応じる姿勢にある。
しかしながら、当面、返済期限の迫っている額が230億ドルと、ロシアの八倍に達しており、具体的な救済策をまだ発表していない。

 というのも、先週のトランプ訪中で米中協力関係を謳い、「北朝鮮制裁の徹底」を約束したばかりの習近平にとって、『反米、トランプのラテンアメリカのアメリカ化阻止』を獅子吼するマドゥロ政権に、債務減免、利子返済繰り延べなどの条件をすぐには提示出来ないからだ。

 ロシアは産油国であり、ベネズエラから原油輸入の必要がない。しかしベネズエラ原油代金の先払いというかたちで融資をしてきたのだ。それもこれは、嘗てのキューバのように中南米に政治的拠点を必要としているためである。


 ▼中国の中南米重視戦略はトランプの「インド太平洋」戦略といずれ衝突

 他方、中国は原油輸入国であり、ベネズエラ重視は、原油供給元としての重要性が優先事項。なにしろ一日900万バーレルを輸入し、年間の支払いは1500億ドル。同時にベネズエラの石油鉱区の開発権も抑え、強気の投資を繰り返してきた。
原油価格が1バーレル=100ドルの高値圏のときに将来も高値は維持されると見通して、強気の投資を展開してきたものだから、原油相場が半減したことによりベネズエラ経済はペシャンコとなった。

ベネズエラは「わたしはマオイスト」と阿諛追従の限りを尽くして北京のご機嫌とりに終始したチャベス前大統領の無為無策が昂じて、国家歳入の95%を原油輸出に依存してきた政治の貧困が最大の原因なのである。

 したがって中国は原油代金の「先払い」という条件で、融資返済の延長に応ぜざるを得ないだろう。この点でロシアとは動機が必ずしも一致しない。

中国はパナマ運河を経由する石油タンカーが主であり、そのためにパナマにも巨額を投じて、ついには台湾と断交させ、パナマ大統領は18日に北京を訪問したばかりである。

 第二パナマ運河となる予定だったニカラグア運河は工事中断に追い込まれ、おそらく放棄せざるを得なくなるだろう。ベネズエラに建設してきた中国支援の新幹線工事も中止、工事サイトから中国人労働者は去った。
 そればかりか華僑系の新規参入組や先住の中国系華僑などがベネズエラに四十万人もいたとされるが、多くはすでに夢破れて中国に帰国した。
 ベネズエラの破産は中国の金融パニックを引き起こしかねない状態である。
  □◇▽み◎□◇◎や△□◇ざ□▽◎き◇□◎ 

【転載終了】
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2017年11月16日

トランプのアジア歴訪が地域を貿易戦争と軍事衝突の瀬戸際にたたせる 15 November 2017


 トランプの12日間アジア歴訪(日韓中越比)が何を齎したか。様々な意見が交錯している。しばし決めつけを排し、幾つかを拾おう。表記はその一つ、つまみ食いする。
《摘要》
1。何らかの形式の妥協到達に努める密室交渉の無数の暗示に関わらず、先週の韓国議会の床でのトランプの好戦的で範疇的な物言いが彼の政権に術策を講じる余地を殆ど残さなかった。彼は、米国に到達できるかもしれない大陸間弾道ミサイル(iCBM)の所有を北朝鮮体制に許さないだろう、と誓約した。彼の立場は無条件に日本、オーストラリア及び韓国により承認された。

2。9月6日付展望で本紙により措定された疑問が依然として世界中に仄見える。「ワシントンは戦争修辞法をうまく利用するために戦争するだろうか。脅威それ自身ー単にブラフでないことを証明する決意ーが潜在的な核戦争への行進における駆動力になったのか」。

3。同政権の貿易政策に関して類似した疑問が措定され得る。演説に次ぐ演説の中で、トランプはWTOと経済的競合者間の紛争を規制するため第二次世界大戦後米国自身の設立した多国間貿易投資協定とを非難した。各国が実質的に米国との貿易余剰削減を要求することになるだろう非妥協的な「アメリカ第一」アジェンダを追求すると彼は範疇的に誓約した。

4。トランプはこの要求を中国のような「戦略的競合者」だけにでなく敷衍した。また彼は地域の最も緊密な同盟国の中で日本及び韓国を威嚇しただけでなく、ヴェトナムやインドといった国々を米国の戦略的傘の下に入れようと求めている。

5。フィリピンの東アジアサミットで、中国、インド、日本、韓国、オーストラリア、ニュー・ジーランドとアセアン加盟10カ国が北京提案の東アジア地域包括的経済連携(RCEP)形成に向けてさらに会談を催した。

6。二つの米同盟国、日本とオーストラリアは来年まで最終合意を先送りするのに成功したけれども、その確立に向けての動因は明確だった。米国を除外する圏域は、全球的生産ネットワークにより既に重大に統合済の諸国のグループ内部で、より緊密な連結を育て上げるかもしれない。結合されれば、彼らが世界GDPの40%強を生み出し、世界人口の半分を包含する。

7。オバマ政権の代替案は、国内経済の被保護部門を規制緩和するまで中国を排除するだろう米支配のTPPだった。トランプはしかしながら大統領就任初日にTPPを否認した、それが加盟諸国にアメリカ市場へのより大きな参入を与えるという保護主義的地盤に立ってだ。

8。ワシントン同様の中国中心圏に反対するだけの日本の支配階級は米国の参加なしTPP設立を依然押している。圏が究極的に形成されるにしても、RCEPによって規模、範囲及び野心面で矮小化されるかもしれない。

9。トランプはアメリカ支配階級の脱世代化と絶望を擬人化する。アジア中で、彼は国々がアメリカ商品をもっと多く買うか制裁に面するかと要求する以外できなかった。時々、米国の大統領はアメリカの軍産複合体のための脅迫人という印象を与え、諸政府が米製航空機、戦艦及びミサイルを「数十億ドル」多く買えと言い張る。

10。そう呼べるならば、トランプ歴訪の唯一の成功は日本、オーストラリア及びインドーその支配エリートがアメリカの相方同様機器に打ちのめされた国々ーが対中軍事衝突のための「四辺形」同盟への支持を示し、中国の増大する地域及び国際の影響力を遮断せんと求めることだ。

11。トランプのアジア歴訪が米国の戦略的地位における新しいどん底を刻む。国際的労働者階級の直面する途方もない危険は、しかしながら、アメリカの支配階級が依然として莫大な戦争機械を持ち、時に応じて繰り返し、その全球的支配を保持するためにその兵器使用の覚悟を誇示してきたことだ。(止め)
***
 「トランプ大統領:ルール変わった、帰国時に重大発表−アジア歴訪終了」なるブルームバーグの記事あり、それを見なければ総括し難い。
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2017年11月15日

【鮮】過去の北朝鮮政策は希望的観測に基づいていた 阿久津博康


 軍事強国化を進める北朝鮮に対し「話し合い解決」を主張する向きがある。トランプ自身が表向きの発言(戦略的忍耐の放棄、すべてのオプションがテーブルの上にある)とは別に秘密裏に対話を続けている。もう四半世紀、話し合いは進まず、北朝鮮がその間に長足の軍事進歩を遂げた。言い換えれば、北朝鮮を放置していた。ではその理由はなんだろうか。

 先に言及した『現代日本の地政学』所収の一編で阿久津博康は過去(1990年代から2000年代)が「北朝鮮の体制はいずれ崩壊する」との希望的観測に基づいていたと指摘する。阿久津博康曰く、研究者の間でも「時間は我々の味方だ。時間稼ぎをして体制崩壊を待て」というアプローチが主張された。>その無効ぶりは説明するまでもない。

 今回のトランプのアジア歴訪で「すべての選択肢がテーブルの上にある」を支持したのは、日本の安部だけだったという報道に接した。隣接する中露韓は戦争の混乱で自国に悪影響の及ぶのを嫌うだけでなく、それぞれに思惑を持つからだ。精々のオチが現状凍結(開発スピードを緩めることを含む)だと見越せば、話し合いの結果は我が日本にとっては何の改善にもならない。ましてそれと引き換えに制裁緩和となれば、日本のリスクは増大する一方だろう。

 阿久津は言う。
<「北朝鮮はいずれ崩壊する」、「北朝鮮のような遅れた国に核開発など出来る筈がない」、「北朝鮮が米国に届く大陸間弾道弾ミサイル(iCBM)を作れる筈がない」、「北朝鮮に対しては現有の防衛能力で十分対応できる」などの従来の前提条件を再検討しなければならない。

北朝鮮側はー
<まず北朝鮮の究極の最終目標は、外敵に対する安全を確保しつつ体制維持を図ることだ。
<独裁国家には政治的な障害が殆どない。民主主義国は政治的な手続きが必要だ。この非対称性は独裁国家に有利だ。

想定されるシナリオ(一部掻い摘み)
@安全保障リスク
・北朝鮮の短距離弾道ミサイル、スカッドが韓国内の在韓米軍基地や、各種主要施設に向けられる。中距離弾道ミサイル、ノドンが日本に向けられる。同じく中距離弾道ミサイル、ムスダンがグアム島に向けられる。米全土を射程に収めるiCBMが完成し、それが米本土に向けられる。
A政治リスク
・オバマ政権の下で「戦略的忍耐」の名の下で事実上「戦略的放置」が行われ、禁止ラインである筈の「レッド・ライン」が「レッド・カーペット」に変わった。>トランプ政権の対処も泰山鳴動ネズミ一匹になりかねない。
・このまま行くと日米間で、状況認識または対応を巡って齟齬が生じるおそれがある。
・北朝鮮の崩壊リスクに加え、核・ミサイル能力の増大リスクも高まる中、日本の役割が矮小化されたままでは困る。将来、朝鮮半島が統一された場合、北東アジアでの日本の政治的存在感がいっそう希薄化するリスクを回避できなくなるリスクがある。
B経済的リスク
 略
C地経学的リスク
 韓国、北朝鮮ともに中国への経済的依存を深めている。南北間の貿易量は、それぞれの対中貿易を下回っており、もし現在、朝鮮半島が統一されたら、朝鮮半島の経済全体は中国経済に吸収されてしまう。これは即ち、統一コリア全体が中国の勢力圏に入り、朝鮮半島をめぐる古典的な地政学的ダイナミズムが、中国に有利な形に変わるということだ。(止め)

***
 トランプの「アメリカ・ファースト」は当然日本にも適用され、且つディール(取引)本位の彼の発想法からすれば、日本をどう取り扱うのか場合次第になる。打つ手がなくなりつつある現在、今までの強硬姿勢を打ち捨て、アメリカの関与をやーめたも希少とはいえないわけでない。あり得るのが米本土に届くiCBM開発中止と引き換えに他の核・ミサイルを米が容認するものだ。見返りに何を要求するか不明だが、豊富な鉱物資源利権があるかもしれない。

 当面、日米同盟依存が不可欠の日本は米国にすがりつくしかないが、憲法改正で国防軍を持てれば、かつての分業的日英同盟のようにアジアでの役割を米国にとって代わるがいい。

 なお、希望的観測といえば、上述のようにある程度の根拠に基づくのはまだしも、日本に残存する「外交で問題解決する」と主張する者には、恐らくなんの展望もないだろう。
 
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2017年11月11日

【泰】王室火葬の儀後の2本の批判文 その2(完) NEW MANDALA - 02 NOV, 2017


【承前】その1はこちら
8。最近までオーストラリア国立大学にいて直ぐにウイスコンシン大学マディソン校に移るタイレル・ハーバーコーンが記す。如何に王室の火葬の儀がタイ国における権威主義的支配の性格について疑問を提起するサイドショーを「計画されざる強制休暇」の形で提供したか。
 10月20日、エカチャイ・ホンカンワンがフェイスブックを経由して、国王プーミポン・アドゥンラヤデートの火葬される日に、赤服を着てカフェで1時間かそこら本を読みに行く積りだと発表した。この未決着の当局が概して控えめだと言うためだ。警察からの警告が1日のうちにやって来た、公表されない職場訪問の形でだ。エカチャイは自分の声明と計画した行動とが如何なる面でも法律違反でないと言い張った。3日後、10月24日、制服着用・非着用の警察と兵士との14名が自宅のドアを蹴破って同行しろと要求した。彼らが2つの選択肢を与えた。カンチャナブリに休暇に行くか、火葬の儀が終わるまで軍隊の陣地で時を過ごすかだ。彼はカンチャナブリを選んだが、計画にない強制された休暇に母親を連れて行けとの当局の申し出を拒んだ。

9。エカチャイ、活動家にしてもと政治囚は火葬の儀の完了した後10月28日に約束通り帰宅した。解放の数時間後彼はプラチャタイにインタビューを与えた。それは明白な暴力ー警察と兵士が自宅に押しかけた時彼は攻撃されたーと馬鹿馬鹿しさー支出用資金として当局が彼に5,000バーツを与えたが、それから彼を同行させた(自由を制限するため)役人ばらは彼が食事代の支払いー起こったことーをするのを待った。タイの人権弁護士たちは即時にこの計画されざる、強制的休暇をその現実の名前ー裁量的逮捕と拘禁ーで呼んだ、国際人権法及びNCPO自身の法律の下のタイ国の義務双方に違反すると。

10。2014年5月22日以来何度も、私は書いたり言ってきた。起きていることが新種の思考と新型の分析を要求する。国王プーミポン統治の終焉と新しい統治の始まりは同じことだ。先月、学者、ジャーナリストやその他解説者火葬の儀とそれへの数百万人のタイ人の参列との社会的、政治的、宗教的、文化的及び経済的意味を尋ねてきた。しかし、クリスファー・クルッパやでヴィッド・ヌージェントが普通の権力中枢の外部にいる「分析の中心から外れた位置」と呼ぶものからタイ政治史に取り組む傾向のある人間として、私の意見はサナムルアン(王宮前広場)で起きたことに加えて、エカチャイの裁量的逮捕と拘禁が批判的分析を要求するというものだ。現在の必要とする緊急分析に貢献する精神で、ここに生起する3つの問題がある。

11。その1。何がエカチャイの発表について不安だったのか。彼が敢えて火葬の日に黒以外の色を着ると提示したことか。彼がカフェに行って本を読む計画だったことか。彼の発表は計画された個人的行動の1つであって、どんな類であれ表現或いは抗議に他人の参加を呼びかけるものでなかった。独立した思考について当局を震え上がらせるものは何だろうか。(注:独立した、批判的思考こそまさにタイ国のものを含めた大学が新しい知識の開発とランキング上昇のために奨励を希望するものだ。有機化学者や理論物理学者による独立した思考は喝采されるかもしれない。だが普通の市民によるものは危険であり、中止させねばならない)。

12。その2。「法律」がその意味を剥ぎ取られたNCPOの柔軟な法体制の中でさえ、警察と兵士はどんな犯罪でもエカチャイを責めることができなかった。だから、多くの初期体制の伝統の中で、彼らは裁量的に彼を逮捕し拘禁したのだ。また多くの初期体制の伝統の中で、彼を鉄格子に閉じ込めるよりは寧ろカンチャナブリにある滝や行楽地に彼を連れ出すことでこの事実に覆面を被せようと試みた。当局は裁量的逮捕と拘禁とが(計画されない、強制された)休暇の偽装の下実行される時、何であれ強制的或いは暴力的に見えないと思うのだろうか。当局は逮捕及び拘禁の覆面隠しのこの試みが失敗し同時に失踪の可能性について恐怖と不安を掻き立てると悟るだろうか。彼らは素朴、皮肉屋或いはその両者の組合せなのか。当局の内申にあるものは彼らの標的になる者の経験に影響しないが、それが彼らの想像し築くことを目指す体制及び社会の種類を暴露するかもしれない。

13。どんな分析の種類或いは様式でもこれら2つの質問に答えることが或いは可能かもしれないし、多くの関連するもの、エカチャイ・ホンカンワンの裁量的逮捕及び拘禁を含む、が1個人だけでなくタイ社会にとって危機と危険な瞬間との信号の筈だ。彼女の最新本、『未来は歴史だ;如何に全体主義がロシアを再獲得したか』の中で、マシャ・ゲッセンがロシアにおける民主主義の可能性破壊の緩和と全体主義の復帰を理解するのに人間性と社会科学者が失敗したかを批判する。ハンナ・アレントをなぞりながら、彼女はこう書く。「機能する民主制の中、言い放たれた理想と現実との間の矛盾が社会及び政治の変化を齎し得、そして屡々呼び出される。これが埋め込まれた亀裂を消滅させはしないが、噴出の中でそれが社会をもうちょっと民主的に且つもうちょっと不平等でなくする方法を持つ。全体主義イデオロギーはそうした修正を一切許さない。…全体主義イデオロギーと現実との間に亀裂はない、全体主義イデオロギーはその内部に現実の全てを含むからだ」。彼女の分析は現在の日のタイ国と共鳴する。何人かがタイ国におけるイデオロギーと現実との間の亀裂を解析しようとするなら、2017年10月のこの2週間を手始めにせず、どこで人は始めようとするのか。権力から遠く離れて見えるかもしれないが、事実上その維持にはカンチャナブリのリゾートのように鍵である1つの場所が分析の中心から外れた位置にとってあるかもしれない。(止め)
***
 毎日朝夕6時には国歌(国王賛歌を含む)斉唱のテレビ番組が流れ、クー後はそれに軍政の広報が加わった。学校では「タイの基礎」として国王の地位が顕彰される。1932年革命(最近ではクー説が強い)後、ラーマ7世は国外に脱出、結局生前退位で帰国しなかった。その間(第2時世界大戦終了まで)、タイ国は国王が国内に不在だった。そして奇妙な死に方をしたラーマ8世を間に挟みプーミポン国王が戴冠式を迎えた。開発独裁式の事実上の軍政が続く中、生まれたのがタイ式民主主義だった(それまでは西欧型民主主義を志向)。そして国王を持ち上げてXーを正当化する方式だった(国王の政治利用)。その波にうまく乗ったのがプーXXXだ。言うまでもなく西欧型立憲君主制なら憲法を停止させる権限、或いはXーを承認・不承認する権限がプーXXXにない。冷めた見方をすれば、彼は政治サーフィンに長けていたのだ。

 国民の敬愛は嘘でないが、繰り返し述べてきたように個人的なもので一代限りなのだ。さて新国王がどう泳ぐか、国民がそれを認めるかどうか。プーXXXの残影は早晩消える。国民がそこに何を見るだろうか。
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2017年11月09日

【泰】王室火葬の儀後の2本の批判文 その1 NEW MANDALA - 02 NOV, 2017


 前稿の補足(表記)。火葬の儀の政治的意味合いの解読。
《骨子》
1。今週初め、ニュー・マンダラは故国王プーミポンの火葬の儀の重大性に関して一組のタイ人学者の短い省察を読者に届けた。今日もまた西洋に基盤を置くタイ国の周知の学者二人の思想を喜んで共有しよう。

2。クイーンズ大学のパトリック・ジョイ曰く。王室火葬の儀の重大性に及ぶ限り、それは「昔と同じ」論だ。私は当惑しつつ受容した。私はタイ国の君主制について書いてきたから世紀に一度の瞬間、つまり国王プーミポンの火葬の儀、タイ国史で最長統治の国王に興味を抱くべきだ。しかし、それは言いがたいほど、催事全体がそうさ退屈だった。

3。国王プーミポンの崩御はこの十年の最良部分をめぐって描かれてきた。よく知られるように、2006年9月民主的に選挙されたタクシン政府の転覆に続く、君主制が熾烈に政治化されてきたこの長期の経路にわたってだ。その時以来、数百万の言葉が君主制、特に国王プーミポンについて王党派、共和派、立憲君主派、黄色及び赤色によって書かれてきた。タイ国の政治環境が変わるある日、新しい筋の素材が入手可能になる。そして人々が投獄或いはもっと悪いことの恐怖なしに語り出すのが最終的に自由になる。我々は国王プーミポンについて何か新しいことを学ぶかもしれない。しかし葬儀の解説の中で我々は同じ退屈な決まり文句ー時にはずっとよく知るはずの分野の著名学者からやって来るーを聞いたり読んだりしがちだ。

4。退屈は過度な王室儀礼と一部関係ある。十年長の政治的危機以来、王党派プロパガンダ機械が過剰稼働して君主制を覆い隠してきた。あれこれの王室儀式がほぼ常時実施される、王党派のゆっくり燃え上がる狂気の水準を維持するのが目的だ。

5。王室の火葬の儀は、そうした出来事の希少性、彩り鮮やかな衣装、精巧で印象的な焼却棟、難解なヒンドゥー教・仏教の葬儀の儀式にも関わらず、事実上は単純に王党派プロパガンディストの普通のテーマの焼き直しだ。それは他の王室儀式と全く同じメッセージを投げかける。国王は「神に似た」将来のブッダだ。彼は全臣民(”市民”でない)に愛される。彼の忠臣(カー・ラチャカーン)が忠実に彼の望みを実現する。タイ人は君主制への忠誠心で団結される。勿論、これらメッセージの全部が真実でない。それこそ人間に可能な限り大見世物として出現しなければならない理由だ。

6。王室儀式の中での最高度の劇場性は君主制の現実の実績と国王プーミポン自身の経歴に対して逆の割合の中にある。君主制の批判家はカメラに撮られ裁かれて、何年間も監獄に監禁されるか、永久海外亡命を強制される。君主制の政治的介入は秘密に覆われる(それは”ネットワーク”を通じて工作されるのか。さもなくば奥の院“deep state”の中心でか。或いは?)。その財政事項は不透明だ。民主化、反王党派政治の歴史は抹消される。

7。君主制の真の機能が秘密保持される方法は王室主題が臨終の君主を凝視するのを禁じる時、ある種封建的実践の現代版だ。その代わり、我々には王室儀式の退屈がある。サペール・オーデ(敢て知れ)!(止め)
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2017年11月08日

推薦)【泰】王室火葬に関する二つのタイ人意見 NEW MANDALA - 30 OCT, 2017


 見事に荘厳された国王火葬の儀が終わった。グランド・パレスや式場周辺には沿道で最後の別れを告げるタイ国民が喪服に身を包んで、前日から押しかけ夜は路上に寝てまでして、参列した。1フット(30cm)ずつ進むパレードは2時間かけてゆっくり進んだ。時折映るタイ人の顔は皆涙に濡れていた。火葬場建物のレプリカが主要な地に配られ、献花の列が延々と続き、一般寺院でも簡易式典が催された。さて大王の魂はガルーダに乗って天国にたどり着いただろうか。

 豪勢にして静寂に行われたこの葬儀、外国では惨憺の声があがったと聞く。では国内のタイ人は弔意を示しながらも、内心これをどう見たのか。表記はその一面を伝える。
《骨子》
1。過去数日間バンコクで催された故国王プーミポンのための王室火葬の儀はある面タイ国の政治的一時代の終わりを刻む。我々のタイ人読者及び寄稿家の事実上全員にとって、国王プーミポン生活や仕事のあれこれの面で常数であり続けてきた。ニュー・マンダラはこの瞬間が彼ら及びタイ国にとって意味するものに関して、学者による短い省察の幾つかを共有する積りだ。

2。「2016年10月13日まで全生活を国王プーミポン統治下で過ごしてきたタイ人」と紹介するよう頼んだ一人の研究者は、タイ公共生活における君主制の中心的場所を認知する。しかし、社会が「いつも危機からの救済を大王に甘える」ことを健全かどうか訝る。

3。「故国王プーミポン・アドゥンラヤデートの最近の火葬の儀はタイ国での在位70年の後に彼の達成した道徳的権威、敬愛を宣言した。国王プーミポンが王位に登った時君主制は低調だった。だが彼は多くのタイ人が国家の大黒柱と見なすものへと成るまでその地位を持ち上げてきた。にも関わらず中には、この地位は数十年の長きにわたる国家後援プロパガンダの結果であり、不平な見方がタイ国では合法的に表明され得ないと言う者がいる。

4。国王プーミポンの半神聖な凌駕されない道徳的権威が彼をしてタイ国憲法の規定するものを超えた政治的影響力を揮うのを許した。1973年と1992年の二つの流血の政治的衝突を終わらせる彼の介入はタイ脈絡でのハッキリした文化的カリスマの好例として広く引用されてきた。しかし、彼の人生の最後の十年間、1932年革命以来最も暴力的で乱気流の政治的時期に苦しむ間、国王は脆い健康状態だった。彼の統治の最後の十年を刻んだ政治的暴動の最中の彼の沈黙は様々に解釈され、タイ君主制の将来を巡って懸念を提起した。

5。国王プーミポンの崩御で、タイ国は今海図なき領域に入りつつある。64歳のマハー・ワチラロンコン、国王プーミポンの唯一の息が昨年末王位を継ぎ、直ぐに戴冠すると見込まれる。今彼の父王の火葬が行われたからだ。故国王の高度に敬愛された地位を所与とすれば、新国王が賞賛と崇敬の類似水準を達成するのは極めて挑戦的な課題だろう。

6。そうであるかもしれないように、タイ国が成熟した民主的社会であるには、タイ人が危機からの自己の救済をいつも大王にしがみ付かないようにすることがより健全だ。彼がどれ程偉大であろうとも一個人に高い望みを託す社会は自ら破壊の種を蒔く。新しい挑戦を平和裡且つ効果的に処理できる民主的制度を強化する努力を払うことが死活的だ。[青字強調は私]

7。「タイ人学者」としてだけ紹介するよう頼んだ別の学者のこのノートは「国王プーミポンのカルト」の連結効果に狼狽を表明する。

8。「国王プーミポンの火葬の儀は多分タイ国の歴史上最も記憶に残る瞬間の一つだ。生活の隅々全部、全専門職業人、全民族からの人々が全員黒服を着用するー傘やその他アクセサリーの下に蹲ってー王室の行進に沿っていようと何日も参列する。万事が完璧に振り付けられている。この全てが敬愛された国王への最後の別れを演劇的で神聖な機会にした。だがこの愛と神聖は自然なものでない。国王プーミポンのカルトは生まれるのに何十年もかかったーそして国がこのカルトを完全にすべく非常に多くを犠牲にせねばならなかった」。

9。2016年10月13日の国王プーミポン逝去以来タイ人にとっては困難な年だった。偉大な国王の喪失を多くが嘆き悲しんだけれども、他の者はシュールレアルな情熱の別の勃興を生き延びる格闘をした。国はショックと拒絶、それから悲哀と怒りを伴う恐ろしいニュースに最初に反応した。モブは暴発して黒服を見つけるのに遅すぎる者を狩り出し、或いは亡き君主に公然とその愛を表明する。少数の不運な個人が打ちのめされたーうろたえた、彼らの大半は適切に行動できない精神障害の人々だ。そうした感情が死滅するにつれて、受容がやって来た。黒を着ない人々は省かれた。「彼らもまた国父を愛したが、正しい喪服を購入する余裕がなかったからだ」。国王の死に同情しないかもしれない者にとって社会が表現の自由を討議できなかったことは悲しくないのか。これは、精々、贋の団結だ。

10。年の間中、プロパガンダがいつも通り続いた。国王の人生の各様相が栄光化され共有された。彼の長い統治は正しく彼がタイ現代史のほぼ全部の主要な出来事に巻き込まれてきたことを意味した。これまた正しく、彼の統治が数百万タイ人の生活向上を齎してきた。だがプロパガンダが激しくなるにつれて、物語がより信じ難くなった。国王プーミポンは彼のみが国を変容させ、アジアの先頭に運んだ半神として描かれた。ほかの誰一人としてその信用をとったり、或いは共有できなかった。幾つかの物語は明確に偽物だが、人々は喜んで著者を許した。彼らが読者の心に喜びを齎したからだ。白鳥が敬意を払うために来たり雲が彼の画像になった。プーミポンは、多くが主張した、ニルヴァーナに達した。これらの物語は時に軍政の情報作戦課により作られたが、その一部はプーミポンに役務を申し出た本当に信じた個人により書かれた。

11。驚いたことに、多くの批判的精神を持ち、良い教育を受けた若者がプーミポンの釈明家になるのを目撃してきた。彼らは現代の自由民主主義的価値観に十分曝されたタイ人のより若い世代だ。その一部は世界であり得る最良の教育を受けてきた。彼らは西洋で暮らし働いたことがある。私は彼らと無数の時間数雨を使ってタイ国の将来を議論した。多くが我々の国に蔓延する社会経済的不平等性と軍隊の介入問題を批判できた。それでも彼らは豪勢な葬儀を弁護し西洋の批判家に対しプーミポンの遺産を称揚した。どれほど多くのタイ人がこの偉大な人物と国への貢献とを愛したか強調するが、彼らは専制的な不敬罪法、プーミポンへの愛を叩き込むために生じる機械化、そして故国王のより暗い様相を見逃した。

12。斯様に国王プーミポンへの愛は絶対的だ。タイ人は奇跡的な課業を充足したがどんな正常人も誤る偉大な人物としてプーミポンを祝うことができない。贋のニュース、嘘、間違い、それに暴力の全部がその目的達成のために正当化され、それが大量の王党派自動人形を生む。タイ人は偉大さの物語で恒常的に矮小化されてきて、弱く価値なき我々は彼の慈悲と恵沢なかりせば決して何事も達成できないと思い知らされてきた。だが我々は2017年10月26日の後、どこへ向かっているんだろう。火葬の儀は最良の超王統主義だ。文字通り世界の隅々のタイ人数百万人が力を合わせてプーミポンの遺産を記念した。散文と詩、写真、絵画それに歌が国民の愛する父の思い出にと数千人のタイ人の手により美しく書き上げられた。だが月でさえ暗い側面がある。プーミポンが我々の父ならば、その時、葬儀が近づいた時ドイツから飛んで戻っただけでーしかも、それぞれ固有の問題を抱えた自分の子供と一緒に二人の側室を連れた年上の兄弟よりも一層の問題をタイ人は探す必要がない。

13。王党派自動人形が単純に幻覚から覚め正常化するだろうか。私はそうでないと推測する。超王統主義で長く恩恵を受けてきたエリート・ネットワークはそのカルトを国家を操縦し続けるのに多分利用しようと努めるだろう。そうなら、酷く自身の正当性を築きあげねばならない新国王ワチラロンコーンは付きまとう彼の父親の成功とどのように融和するのだろうか。70年経って、王党派の月は最終的に欠け始めている」。(止め)
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