2017年10月30日

【泰】バンコク・ポスト紙社説 「政府への質問」 30 Oct 2017


 タイ国支配層の一部と見られるバンコク・ポスト紙だけに表記社説が注目される。
《骨子》
1。服喪期間が終わるー公式に。月曜日の朝、国旗が全開ではためく。公務員用喪服着用規則と公衆向け着衣指導線が失効する。でも、悲しみは終わらないだろう。誰一人我らが時代の最も偉大なタイ人の数え切れない業績を忘れないだろう。服喪期限切れが国をうわべの正常状態に戻すが、事態は決して全く同じにはなるまい。

2。悲しいけれども高揚する葬儀期間の結論は万人が日常生活に戻ることを意味する。バス、鉄道及び航空が通常の定期便に戻る。学校、職場、政府官庁全部が月曜日から午後3時まで営業する。首相プラユット・チャンオチャとその政府は定例の火曜日閣議の準備をするだろう。

3。将軍プラユット下の政府構成員は先の火曜日の悲しみに打ちひしがれる最高潮に齎された行事への世話と集中とで尊敬される感謝に値する。大王プーミポン・アドゥンラヤデートの葬儀準備は非の打ち所のない優雅さと世界中で述べられた素晴らしさを提供した。3年半前に権力を掌握した時、将軍プラユットはタイ人を団結させると約束した。先週、タイ人は以前決してなかった程団結した。

4。葬儀は今や敵に戻るだろう政治的問題のさ中に起きた。幾つかは緊急だ。これらはラージャパクティ公園改良計画の進行中スキャンダルを含む。7人の大王の大規模な彫像が立つプラチャプキリカーンの場所は当初から暗雲の下にあり続けてきた。最新の論争は2部の「構築物」だ。これらは政府支援でこれまで設置された最も高価な52箇所のトイレと5軒の店舗と思われるもので構成される。これらには尚1千6百万バーツの「寄付」ー「スキャンダル」と同義になった言葉ーが掛かるだろう。大規模な過剰支出との主張に対抗して、陸軍司令官チャラームチャイ・シティサット曰く、軍隊はひと度国家腐敗防止委員会(NACC)に捜査されたプロジェクトについて全面的な財政細部を公開する覚悟がある。彼は公衆が詳細を期待するのを知るべきだ。

5。それからレーザー速度検知「銃」と内相、元陸軍司令官、将軍アヌポン・パオチンダの問題がある。彼は必要な質問をせずに購入を後援したからだ。災害防止灌漑省(DDPM)提案の計画されたほぼ6億バーツの速度検知銃購入が公衆の叫びに着火した。将軍アヌポン下のこの省は最近ソンクラーンと新年期間中の交通事故死亡と負傷に興味を持った。だが、それは速度と事故について専門性も法執行権限もないのに、仕様を書き、法外に膨らんだ価格で数百の速度検知器購入を要求する。

6。此処で並行する問題は将軍アヌポンが知ったこととそれを知ったのが何時かだ。彼は、一般論として或いは詳細の孰れかでも購入を疑問視しなかったと主張する。将軍アヌポン曰く、彼は単に数十億バーツのDDPMからの要請を内閣に移しただけで、本質的にそれを読まず、或いは要約説明を受けなかった。正確な細部は知らされてさえいない。2本の報告書が言う、DDPMが849挺か1,064挺かの携帯速射銃を購入するのに5.73億か9.576億バーツの孰れかを欲しがった。どちらの場合も法外で、そうした装置の価値を全く反映していない。

7。将軍アヌポンは単に問題の装置が従来の調達よりも安いと言い張った。

8。これらに似た事例が積み上がりつつある、他方将軍プラユットは選挙日を要求する大衆感情に冷静に対処し続ける。宣べられたクー理由は賄われてきた、そして今日と国政選挙間にある唯一の作業は書類作りだ。将軍プラユットは紅テープ(煩瑣な手続き)を引き裂き選挙に向かうか山なす批判に直面せねばなるまい。(止め)
***
 軍政とは実は官僚(クーの影の首謀者)主導政治のことだ。国防はとまれ他のことは彼らに分からない。役人への丸投げだ。「イエス・サー」しか知らぬ任命議員が殆どの議会にチェック能力はない。ラバー・スタンプだ。

 軍事費について言えば、21世紀はクー(前回、今回)をテコにして予算額が登り調子を続けている。最近では潜水艦、タンク、武装車両、戦闘機、銃器と大盤振舞いに見える。(当然、武器売買にアンダーマネーはつきもの)。

 無駄な出費は軍政開始当初からあって、閣議用高性能マイクの費用が法外だと批判を浴びた。国庫の金をルーズに使って最早当初額の何分の一かになった。ノーチェックだから当然だ。NACCはお仲間調査をしないし、してもいい加減で放置する(以前書いた通り)。

 世直しクーで出来る軍政が問題解決できないのは、クーの数の多さが逆証明する。クーで作った体制が(支配階層にとっての)失敗をする→腐敗撲滅(繰り返される大義名分)のクー→それも失敗→クー…

 残念ながらタイ政界に清廉潔白の役者はいない。国王を政治利用するX政も同じだ。
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2017年10月29日

【米】トランプのインド太平洋戦略の挑戦 The Diplomat October 27, 2017


 11月初のアジア訪問でトランプのアジア政策がハッキリしてくるだろうが、ツイッター嵐のなか何が見えて来るのだろうか。表記は「政権の初期地域ヴィジョンとその前にある挑戦の先を見る」と言う。以下つまみ食い。
《摘要》
1。来週、米大統領ドナルド・トランプの就任アジア5カ国歴訪の脚光の一つは、高官らが「自由で開放されたインド太平洋“free and open Indo-Pacific”」と名付けたものへの政権のやり方に関する大いに期待された演説になるだろう。そうしたハッキリした発言は意味があり歓迎される筈だけれども、来る数ヶ月のうちに幅広の国内的及びより広範な全球的熟慮を備えた地域ヴィジョンを如何により具体化し整列させるかよりも、その立論を如何になすかの方が政権の挑戦はより少ないだろう。

2。私が以前言い立てたように、新しい政権は早期にアジアへの関与とやり方とを明瞭にすることが重要だ。新政権はアジアで米国関与の持続可能性と形態について不安を生み出す、そして冷戦後世界のなかでそうなるのは理解出来る。我々は世界にとって上昇するアジアの重要性が米国外交政策内の位置付けに合致しない力学を目撃してきた。ワシントンが間欠的に国内或いはバルカンから中東までの他の地域、孰れかへの関心によって引き裂かれるからだ。最も幅広の水準で、オバマの「再均衡」は一層この傾向を修正する企てだった。

3。トランプ政権の場合、緊急にアジア方式を前進させる討論が一層納得的なものだった。トランプの「アメリカ第一」ヴィジョンにある素朴さと狭隘な取引主義が彼の就任で「アジア第一」外交政策の終わりを刻印するかもしれないとの懸念を惹起した。そして有望な兆候ー重要なアジア・パートナーとの迅速な従事やトランプ初のアジア歴訪の発表といったものーにTPPからの米国撤退のような懸念される行為を伴って、地域にとっての重要問題は何時この全てが首尾一貫するかどうかだった。ある種の「再均衡」の再均衡が新政権下で期待され、地域での政権ヴィジョンの広い概略についてのトランプの予定された詳述が少なくともどんなものになるのかという疑問に答え始めるだろう。

4。しかし、この初期のハッキリした発言には意味があり歓迎されるべきだけれども、国内外双方の政権の全体的やり方について非常に多くの疑問が未回答のままで、且つ未達の上位位置付けの長いリストが残るから、この物言いが現実へとどう翻訳されるのかについて、アジアには深い不確実性が残るだろう。政権の挑戦はそれ故に如何にトランプが地域外にいる間自由で開放的なインド太平洋論をなすことにはより少なく、三本柱ー安全保障、経済それに民主主義及び人権=に関して来る数ヶ月のうちにそれを具体化し、幅広の国内的及びより広範な全球的熟慮を備えた地域ヴィジョンを如何により具体化し整列させるかにより多いだろう。

5。インド太平洋という概念はそれ自身長くアメリカのアジア関与の枠づけに意味を持ってきた。第2次世界大戦終了以来、米国は平和、繁栄及び自由を前進させるためインド太平洋に規則基盤の国際秩序を築くのを助け指導してきた。今や同地域は世界で3番目に大きい経済、その8つの最速成長市場の7つそれに世界の10大陸軍の7つを誇り、来る数ヶ年のうちに世界の経済算出高の過半を生産すると見込まれる。それでも規則基盤の秩序が今日増大する制約下にあり、その未来は機会と挑戦との両者を保有する。トランプがこの混合した絵図と米国のその中で果たすべき役割に関して疑い無く敷衍するだろう。

6。その時考えるべきあと3つの特定領域がある。安全保障面で、国防長官ジェイムズ・マティスを含むトランプ・チームの数人の構成員が既にこの自由で開放的なインド太平洋の中での政権の発言を枠づけしてきている。そのヴィジョンは政権が同盟国及びパートナーと一緒に、テロリズム或いは北朝鮮のような個別の脅威にだけでなく、権威主義国家、主として中国が南シナ海におけるようなもので規則基盤の国際秩序に措定するより幅広の挑戦にも焦点を当てるだろう。

7。経済面でも、インド太平洋での自由と開放、そこでのワシントンの役割の広い立論は明瞭でよく理解される双方だ。インド太平洋が貿易及び投資の前進で成長し繁栄を共有する場所であり続けるよう確保することに日本、インド、オーストラリアを含む似たような精神の諸国により疑い無く共有される一般的利益がある。またこれの正確な形態とあるべき基準について進行中の討論があり、広く枠づけした米国の役割は中国のような他の役者が進めようと努めている「捕食的経済」に相対してより高い水準へとこれらの基準を引き上げることに集中している。米国務長官レックス・ティラーソンが今月初戦略国際研究センター(CSIS)での演説中述べた通りだ。

8。政権高官らが一環の二カ国間取引が結果的にある種地域ヴィジョンへの道均しになり得るかもしれないと競ってきた。しかし、これらのヴィジョンは育成が容易くない。そしてその間、ワシントンの提供する代替案の欠如が東アジア地域包括的経済連携(RCEP)のようなより低水準の取引や疑問のある一帯一路のような中国主導の枠組みをより魅力的にする。トランプ高官らは北京の発議に反する軌道を続けるかもしれないけれども、アジア諸国が米国に求めるものは単にもっと多くの苦情でなくもっと多くの選択肢だ。

9。最後に。自由で開放的なインド太平洋と規則基盤の秩序のどんな議論であろうとも、この腰掛けの3本目の伝統的な脚ー民主主義及び人権なしでは不完全かもしれない。各政権は理想への長続きした米国の関与と永続的利益とを均衡させんと努力するけれども、大統領自身から忍び込む権威主義の徴候や或る機関についての疑惑がこの側面でのメッセージの明瞭性を曖昧にしてきた。これへの何らかの言及があった時、メッセージが鉄格子の蓋のように寧ろ聞こえた。仮如、トランプの国連演説での「ならず者体制」の選択的性格づけは即時にワシントンからのマニ教的ヴィジョンとその反対の意味合いへの懸念を大きくしてきた者の間に不安を掻き立てた。ジョージ・W・ブッシュの「悪の枢軸」がその点で当てはまるからだ。

10。それでも、次の数ヶ月にわたり諸権利に関する平穏、明快且つ一貫した立場を前進させることが政権にとって決定的だろう。民主主義と人権の前進が米国をして諸国を中国に「譲る」ことに繋がるだろうという単純な考えとは逆に、大半のアジア諸国はその種の理想と利益の均衡が米政策立案者に必要だとの現実を認識してきたし、彼らの懸念はこれの為される方法にある。そして政権が立場をすぐに明瞭にしなければ、歴史的な移行或いは競われた結果を見ることになるかもしれない、2018年にやって来るマレーシアやカンボジアのようなアジア諸国で特に重要な選挙とのこれらの関係の展開に制限を行使する下院のような米外交政策立案過程内部にいる他の役者たちにドアを開けてやるだけだろう。

11。戦略的地域ヴィジョンのお披露目過程は大半の外部観察子が賞賛するよりも米国の政策立案者にとって遥かにずっと難しいものだ。そしてトランプ政権はそれが対決する独自の挑戦にも関わらず、そうし始めることで信頼に値する。だが、ひと度ヴィジョンがお披露目されたときの本当の挑戦は、それに続く数ヶ月のうちにその物言いを現実へと迅速に翻訳しているだろう。(止め)
***
 米議会で北朝鮮との開戦に議会承認をせよとの法案が上程された。つまり議会の反対で開戦できない可能性が生まれた。さあ、それが来月初の各国との話し合いに影響するのかしないのか。気にはなるが、来月のトランプの行動を見るしかない。
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2017年10月22日

20世紀前半の米スパイクマンの予言:「アジアの地中海」がリムランド制覇の鍵


 地政学の泰斗米イェール大教授がユーラシア大陸の沿海地帯を「リムランド」と呼び、「リムランドをコントロールしたものがユーラシアを制し、ユーラシアを制したものが世界の運命をコントロールする」(『現代日本の地政学』中公新書小谷論文、以下引用は同じ)と述べたのはよく知られている。

 また、「アジア大陸とオーストラリア、そして太平洋とインド洋の間にある海域を『アジアの地中海』と呼んだ」。そして「中国がいずれ経済成長を遂げ、軍事力によって『アジアの地中海』を『中国のカリブ海』[アメリカからの比喩]にするだろうと予言」した。リムランドを制し得るからだ。但し、スパイクマンのアジアの地中海=南シナ海+インドネシア海域(マラッカ海峡を含む)

 まさに慧眼で南シナ海をめぐって中国がその通りにやっている。勿論、中国がスパイクマンから学んだ可能性はあろう(未確認)。第二ハートランド(第一はロシア)中国の面目躍如だ。

 直ぐに気づく通り、アジアの地中海はずばりほぼアセアン全域だ。アセアン=東南アジアと言えば、日本が決して失ってはならない金城湯池だ。この権益こそ日本には死活的なのだ。それを中国に奪われれば、日本の運命がどうなるか言わずもがなだ。

 上掲書で小谷はー
<中国が「近海」と呼ぶ、第一列島線の西側にある南シナ海と東シナ海とする方が、今日の地政学上の実態をより的確に反映できる。
ーと指摘した上で、
<2015年の中国国防白書は、海軍の戦略として「近海防御と遠海防御」を掲げた。「近海防御」とは黄海、東シナ海、南シナ海を中心とした海域で、侵略阻止、領土保全、海上交通路の保護などをすることだ。(遠海防御は略)
ーと述べた。

 遠海防御にまだ中国は多くの資源を避けない(とは言っても真珠の首飾りを見れば、布石は打ってある)から、現在我々が注目すべきは近海防御であり、その範囲は日本の「専守防衛ライン」を遥かに超えているが、都南アジアの権益が死活的だから、中国に蹂躙されないようにするのが国益だ。

 「アジアの地中海」、意外に知られていないかもしれない、日本の運命を左右する重要概念だ。当面は日米同盟を軸にせざるを得ないが、少なくともアメリカには中国の動きを阻止してもらわねばなるまい。空想、それも極めて特殊なネバーランドの夢から醒めない人々の反対を放置してでも、アジアの地中海を中国から守らねばならない。
posted by 三間堀 at 13:44| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月21日

【転載】状況は完全に変わった。「中国が北朝鮮を攻撃する」というシナリオの現実性


【転載開始】
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)10月22日(日曜日)
        通巻第5491号  <前日発行>
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 状況は完全に変わった。「中国が北朝鮮を攻撃する」というシナリオの現実性
  米国はミサイルの集中攻撃、陸上戦闘は中国と韓国にまかせる?
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 習近平にとっての対北朝鮮認識は「不愉快」「仮想敵」である。いまや「友好国」とか「血の友誼」とかの両国の絆を顕した古色蒼然たるスローガンは死語になりつつある。
習近平が前々から強調してきたのは「われわれは朝鮮半島の安定を望んでいるのであって、政権の安定を望んでいるのではない(つまり金正恩体制は潰しても構わない)」という文言だった。
 いよいよ最終的な意思決定の段階に来て、党大会の政治報告では意図的に北朝鮮への言及がなかった。「これから何をするか」は明らかにしないということである。

 第一に金正恩は五月の「一帯一路」フォーラム初日にミサイル実験をおこなって、九月のBRICSフォーラムの初日にも核実験を強行して習近平の晴れ舞台に泥を塗った。習近平の怒りが収まる筈がない。この二つの国際フォーラムには世界数十ケ国から元首が出席していたのである。

 第二に国連の経済制裁を実践するに際して、旧瀋陽軍区のダミー企業が北朝鮮との深い利権で結ばれている事実が習近平の権力基盤を揺さぶってきた。失脚させた徐才厚、郭拍雄の残党が軍の内部で不安な動きを示した。
 もし有事となれば、この習近平に楯突いてきた軍を戦争最前線におくることが出来る。

 第三に3700キロ射程のミサイル実験の成功を、日本のメディアはグアムが射程に入ったと騒いだが、ぐるりと向きを変えると、全中国が射程に入ったということである。
 つまり北朝鮮は中国にとっても国家安全保障の根幹を揺るがす脅威となってしまった。中国から見れば、これは裏切りである。

 第四が核拡散の怖れである。
 北朝鮮はVXガスも、ミサイルも見境なく物騒な国々に売ってきた。もし小型核に成功し、これを幾つか生産して、ISやアルカィーダへ売却する怖れもさることながら、中国にとってはウィグルの過激派への売却という事態をもっとも恐れている。
 ウイグル自治区にはIS残党がカザフスタン経由で潜入した気配もあり、平和的解決をのぞむ「東トルキスタン」独立運動ばかりではなく、過激セクトが混在しており、危険なシナリオがあれば、その芽のうちに摘んでしまわなければならないだろう。

 かくして中国の保護国だった子分が親分を軍事的脅威で強請るという事態がシナリオに加算されるようになったわけで、中国は自らの北朝鮮攻撃の可能性を熟慮し始めた。

 すでに北朝鮮の富裕層は、この変化を肌で感じはじめた。レジュームチェンジとなれば、富裕層も粛清の対象となるだろう。富裕層の一部はすでに中国の丹東、瀋陽への脱出を始めており、マンションを購入し始めたという情報が錯綜している。

 トランプ政権の狙いは金正恩の体制転覆が最終目標ではない。
 核兵器の管理である。これが米国の心配事の一番であって、北朝鮮の核兵器の拡散をなんとしても防ぐ必要がある。その点では中国と協力する余地が十分にあるわけで、あるいは既に密約が成立しているとも考えられる。


 ▼ソ連崩壊時の核兵器管理はどうだったか

 ソ連が崩壊したときのことを思い出したい。
 ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンに分散されていた核兵器を、旧ソ連の中核ロシアが一元管理することが絶対の条件だった。米国はそのために協力を申し出て、とりわけウクラナイナに配備されていた核兵器をロシアへ移動させた。
 また旧ソ連の核兵器管理システムコンピュータは米国が受け持ち、とどのつまりロシアの核戦力は米国の「統治下」にあると分析する軍事専門家がいる。

 このソ連崩壊の大混乱の最中に軍人と組んだ凶暴なマフィアがウランを持ち出して、売りさばこうとしていた。
西ドイツの警察が囮を仕掛けて、バイヤーに化け、ロシアからのウランの一部を押収した。当時、ハリウッド映画が、ソ連の核兵器の闇マーケットをテーマとして作品を量産したものだった。

 中国の核兵器管理は陝西省の峨々たる山脈に無数のトンネルを掘って大規模な地下要塞をつくり鉄道で繋いで、円滑にミサイル発射基地へ移動できるシステムを完成させている。

ところが、四川省大地震の際に露呈したのは秘密都市とされた核兵器製造の町が壊滅、パラシュート部隊などが緊急に出動して被災者救出より先に核兵器もしくはウランと思われる箇所にコンクリートを幾層にも流し込んで埋める作業だった。

 
 ▼パキスタンの核拡散の恐怖も去ってはいない

パキスタンの核兵器と米国の関与は不明瞭な点が多い。
 1975年に帰国したカーン博士は核兵器開発をはじめ、日本から大量の部品、関連材料を輸入したことは判明している。カーンは核の闇市場を形成し、その技術を北朝鮮に供与した。パキスタンの核開発の費用はサウジアラビアが負担した。
 パキスタンは国際世論から囂々たる非難を浴びたため、カーン博士はスケープゴーツにされたが、だからといってパキスタン国内で処分されてはいない。

 具体的にはパキスタンが濃縮ウラン技術と遠心分離器を北朝鮮に供与し、バーターで北朝鮮はノドンミサイルを提供した。
ブッド政権下で、核開発は開始されたが、ブッド首相(当時)は「軍はアンタッチャブル。わたしは何も知らなかったし、軍から情報提供はなかった」とインタビューに答えた。
ムシャラフ政権下で北朝鮮との交流は深化し、イスラマバードと平壌間を軍用機が飛び交った。
 
 米国が懸念したのはパキスタンの核兵器がタリバン、アルカィーダ、ISなどイスラム過激派に流れることである。米国議会報告では「管理はしっかりしており、いまのところ懸念材料は薄い」としているが、状況の変化次第でどうなるか分からない。

 したがってパキスタンの核兵器管理に関して米国はパキスタンと密約を交わし、有事の際にはアメリカの特殊部隊が潜入し、核兵器管理を優先順位のトップにおくとしていると嘗てアメリカ人ジャーナリストがすっぱ抜いたことがある。

 こうみてくると、中国は北朝鮮有事の際、まっさきに核施設に突入して、核兵器の管理のための作戦をとることになるだろう。
 だから状況はすっかり変わっているのだ。
      □◇□み△□◇や□▽◎ざ□◇□き◎□◇
【転載終了】
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2017年10月18日

【泰・米】トランプ時代の米泰同盟の管理 The Diplomat October 11, 2017


 プラユット訪米に関連する記事をもう一本。同盟管理の難しい仕事が残るという表記をつまみ食い。
《摘要》
1。今月初めのタイ首相プラユット・チャンオチャのホワイトハウス訪問は、一部の者によって、2014年5月軍政の権力掌握以来凍結していた米泰同盟に於ける大きな解凍として解釈された。事実、両指導者間のサミット会談は既に進んでいた進行中の同盟再較正に於ける単に最新の一歩、条約の両盟友が注意深く管理せねばならないこの先の幾つかの挑戦と面し続けるものとして、理解されるべきだ。

2。2014年5月のクーに続く米泰同盟の当初の冷え込みに拘らず、紐帯は凍結した固体には程遠く、両側が戦略的対話を再開し幾つかの軍事交流を続けて、オバマ政権終了に向けた上昇を既に持っていた。この過程が米大統領ドナルド・J・トランプ下で続いた。2月今年のコブラ・ゴールド演習に米太平洋司令部主席提督ハリー・ハリスーそれをやる最高位の軍人ーが出席した、そしてホワイトハウスの招待が4月プラユットに届いた。

3。トランプ=プラユット・サミットは斯様に既に進行中の再較正過程内の単に最新の一歩だったけれども大きなものだった。それがクー以来タイ国に許された最初のホワイトハウス会談であり両指導者の最初の会談だからだ。しかもその再較正過程は依然来る数ヶ月の裡に両側が対処せねばならぬだろう幾つかの大きな挑戦に直面する。

4。でもこれが亦各側の安全保障上の脅威への認識と対処の仕方間の基本的な相違を覆い隠す。これらの相違が既に表面化し始めた。条約同盟国の中国へのより近い同調について懸念を表明しつつ、米国がタイ国に北朝鮮のような或る分野で「もっと多くを為せ」と依頼した。タイ高官にとって、米国の負担分担関心が表明されるのを聞いたことがあるのは殆ど初めてではない。そしてバンコクはサイバー・セキュリティーからロヒンギャ問題にわたる地域問題で役割を果たすのは幸せなのだけれども、これら依頼の幾つかは一般的にそれから特にアジア政策をめぐるトランプ政権自身の外交政策について未だ非常に多くの不確実性がある時に為すのは一層困難且つ危険なのだ。

5。挑戦は経済的領分で議論が割れるもののより大きい。米国側では、米国が最高の貿易赤字を被ってきた16カ国リスト上に、タイ国、東南アジアで2番目に大きい経済を含んで、早くも二カ国間経済関係に於ける挑戦にトランプ政権が注意を払っていた。米泰の高官はサミット直前の9月末に米商務長官ウイルバー・ロスがタイ国を訪問して、これが管理され得るような方法を通じて作業を続けている。それでもトランプがサミット会談での陳述に注記したように、これは彼の政権にとって懸念分野であり続ける。

6。タイ側では二カ国間経済紐帯が、特にタイ経済と体制の全体的正統性を高める脈絡で、プラユット政府にとり問題だ。タイ国は投資をするもっと多くの米事業が欲しくて、プラユットは持論をトランプ政権との会合だけでなく米アセアン・ビジネス評議会と米国商工会議所とにより組織された催しで直接実業界に告げた。そうすることに米企業の興味は引き続きあるけれども、同時に、タイ国の成長率が依然として潜在力をずっと下回り、その地域の僚友に後れ、その将来的な政治的安定性について懸念の中より長期的に疑問符が続くのも本当だ。

7。それが泰米両国で作用する政治力学に戻ってくる。2014年5月クーに続くタイ国の民主的統治への全面回復は依然進行中で、今は2018年11月に設定された選挙の繰り返す遅延と敬愛された君主プーミポン・アドゥンラヤデートの死に続く進行中の王位継承を含むその時までに起こる幾つかの重要な成り行きがある。軍政がこの継承を微妙に管理せんと企てるので、米外交政策過程にある何人かの役者の間で人権懸念を悪化させかねない手順を国内的に取るかもしれない。それによって同盟に潜在力全部を実現させるトランプ政権の能力を制限或いは少なくとも欲求不満にするかもしれない。

8。しかしタイ高官は、東南アジア僚友の一部に似ていないわけでなく、熱心に内密理にトランプ政権は同盟にある国内政治についての懸念が両面を切り得ると指摘する。トランプが東南アジア諸国に幾つかの断定をなしてきたー一連のホワイトハウス・サミット開催への関与や来月ヴェトナムとフィリピンでの多国間会議出席を含むーけれども、来年の国内で近づきつつある中間選挙の展望をめぐる忍び寄る不安定性と合した政権のポピュリスト的傾きは、タイ政府とエリート内の一部が依然として抱く用心を強めるだけだろう。

9。確かに驚異の認識を同じくし国内の政治展開を管理するような挑戦は、数世紀遡る同盟国、パートナー及び友邦のワシントンのリスト中最古の関係の一つを持つから、米泰同盟にとって新しくはない。それでも以前やったように、サミットの共同声明で謳い挙げた「共通の安全保障」と「共通の繁栄」を達成する積りなら、両側はそれらを注意深く管理せねばならぬだろう。(止め)
***
 タイ国が中国に膝を折ることを望まぬ限り、米国との同盟維持は不可欠な筈だが、タクシン時代の初期に米国との同盟の存在すら忘れたかのような態度が見られ、バンコクポストはじめ主流マスコミに批判されたことがある。後にジャマー・イスラミアの幹部を逮捕、米国に差し出すことでNATOに準じる同盟国とブッシュ・Jr.に認められはしたのだが。タイ軍はアメリカの強力な援助・指導で自己形成してきた経緯があるのにアメリカとの同盟関係をどうするのか議論するのをあまり聞いたことがない。

 日本はかつては「価値観外交」などと言っていたのにクーを黙認するどころか、欧米の厳しい批判のような動きを見せない。寧ろ唯一暖かい対応をして、プラユットの支えとなっている。外国人直接投資のストック・フロー両面でのトップ投資国であり続けている。内政不干渉或いは政経分離かもしれないが、所詮エコノミック・アニマルかとの声も聞こえる。しかし軍事力の裏打ちなき外交だけに、不測の事態に対応できない。タイ国住民としては、もどかしい限りだ。
posted by 三間堀 at 18:24| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【泰・米】ホワイトハウスで歓迎されたタイ軍政指導者 7 October 2017


 タイ首相がワシントンを訪問するのは12年ぶりだと言う。クーに対する欧米の厳しい姿勢から国際的孤立色を憂えていた軍政には、一度キャンセルされたが、トランプの招きで訪問できたのは僥倖だった。さて訪問の成果はどうだったのか。表記をつまみ食いする。
《摘要》
1。タイ国高官が片端にする国連制裁を含め、ワシントンの北朝鮮への攻撃的対決の支持を再確認した。トランプ政権はタイ体制に北朝鮮に絡む全ての金融及び貿易関係を終了せよと圧力を掛けてきている。北朝鮮との山なす衝突は、タイ国内を含む地域中で中国の影響力を切り崩すより広範な努力の一部だ。

2。米高官はタイ国との経済関係振興を呼びかけてきた。タイ外交官や企業代表は金融紐帯及び貿易拡張目的の投資計画を提示した。「アメリカ第一」保護主義の線に沿って、トランプはタイ国にもっと多くの米国商品輸入を要求して、プラユットから石炭の年間購入を5−6万トンに高める約束を引き出した。

3。権力の3カ年、タイ軍政は集会や自由な表現の権利を切り崩し、政府を批判する情報へのアクセスを制限し、無制限の権力を内閣に与える。プラユット政府は、反対や不平を抑圧しつつ、約束した国政選挙を遅らせてきた。

4。クー以来、少なくとも80人が平和的集会のために裁判にかけられ、27人が体制批判で、別の56人が王室批判の廉で訴追された。先月中に、親軍政の裁判所が2010年抗議者への軍事弾圧に責任のある者を保護したが、前首相インラック・シナワットラには腐敗訴訟を数え上げて5年の懲役を科した。インラックは有罪判決が言い渡される前に海外に逃亡した。

5。トランプの、名目上であれ、タイ軍政の抑圧的手法へのどんな批判をも取り下げたこととホワイトハウスへのプラユット歓迎とは、体制を勇気付けて批判者及び反対者への弾圧を熾烈化させるだけだろう。トランプの行動を防衛して、右翼シンクタンクのヘリテージ財団が宣言した。「我々は人権及び民主主義について懸念せねばならぬが、それが我々の同盟国との関係を命じることはできない」。

6。トランプはワシントンのタイ国との関係を「非常に強い…過去9ヶ月間でもっと強くなった」と表現した。ホワイトハウスはタイ国を中国から東南アジア諸国を引き離し、もっと堅固に米陣営に取り込むに際し決定的な要素と見做す。8月、国務長官レックス・ティラーソンがタイ国、フィリピン及びマレーシアを訪れ、軍事及び経済の同盟議論を発議した。トランプは11月のアセアン・サミットに出席する計画だ。

7。トランプのタイ軍政との紐帯強化は従前のオバマ政権の政策の継続だ。2014年の政治的混乱の最中、それがインラック・シナワットラとその選挙された政府との追放準備をしたにせよ、米政府は軍支持を維持した。

8。米国は軍事援助350万ドルの即時停止と軍事演習削減を発表したが、最も死活的なプログラムは損なわずにした。経済関係は手付かずのままで、事実上、オバマが権力にあった2年間強化された。前政権は軍政指導者を決してホワイトハウスに招かなかったが、全ての可能なやり方で軍事的関係を維持発展させるのを目指した。

9。オバマ政権の民主的諸権利への懸念表明と新しい選挙の呼びかけは全くもって皮肉だった。中国に対する「アジア・ピヴォット」の一部として、オバマは中国の増大する経済的及び軍事的影響力に対する対抗攻撃に米国の地理戦略的、政治的及び経済的権益を断言するのに懸念した。

10。地域内の他国同様、タイ国は米中間の均衡を求めてきた。しかしながら、タイ軍は米国と長く続く関係を持ってきた。アメリカ軍事援助の削減に際して、タイ国は中国との軍事的結びつきを強め、米国、日本及びアセアンに懸念を齎した。(止め)
***
 タイ国がどんな政権であろうとも、アジア大陸とオーストラリア、そして太平洋とインド洋の間にある海域を「アジアの地中海」と呼んだ地政学者のニコラス・スパイクマンは「中国がいずれ経済成長を遂げ、軍事力によって『アジアの地中海』を『中国のカリブ海』にするだろう」(『現代日本の地政学』所収小谷哲男論文)と予言している通り、その地政学的重要性は揺るがない故に、アメリカが関係途絶するのは不可能だ。

 米中が自己の勢力圏内へのタイ国取り込みを競い合わざるを得ないなら、タイ国としては米中いずれかに旗幟鮮明にするのは得策でない。どちらからも甘い汁を得られるからだ。米国は民主主義の旗手と嘯くが、数多の独裁者、専制君主の国とも盛んな交流がある。明らかな大嘘だ。それはどこの国でも知っている。だが普遍化した民主主義理念の主導者は必要だから、発言者の資格を問わず、主張内容を採り上げるのだ。

 残念ながらというか、アジア情勢の然らしめるところか、米国(当然日本も)はアジアの地中海、その中枢の一つタイ国を自陣営から切り離すことができない。逆に言えば弥次郎兵衛タイ国のバランス感覚が狂って、極端に中国に傾かない限り、友好関係を維持しなければならない。つまり、軍政が胡座をかこうとも、軍政を転覆させる(レジーム・チェンジ)には至りにくいのだ。本来なら軍政関係者の渡米禁止くらいしてもいい筈なのに。結果、民主主義を望むタイ国民の期待は裏切られたことになろう。
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2017年10月17日

【転載】中国、電気自動車の先端レアメタル独占のためコンゴへ巨額を投下 宮崎正弘の国際ニュース・早読み


【転載開始】
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)10月4日(水曜日)
        通巻第5461号  <前日発行> 
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悪夢だった「リビア型プロジェクト全滅」の教訓は何処へ?
 中国、電気自動車の先端レアメタル独占のためコンゴへ巨額を投下
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あの「リビアの悪夢」を北京の中南海の住人たちは忘れたらしい。
カダフィ独裁体制が崩壊し、内戦が激化、リビアは事実上分裂し、無政府状態にある。元凶は米国が仕掛けた「アラブの春」の影響による。

現在、リビアの石油鉱区はそれぞれのベンガジとトリポリに盤踞して、「政府」を名乗る武装勢力が確保し、イタリアなどが輸入しているが、嘗ての生産量は激減した。

カダフィを支援して百以上の建設プロジェクトをリビア各地に展開してきたのは中国だった。内乱勃発とともにリビア国内にいた中国人およそ36000名が国外へ脱出した。 
西隣のチュニジアや、東隣のエジプトからバスをチャーターし、イタリアやギリシアからフェリーをチャーターし、さらには救援の特別機を飛ばした。
一人の犠牲もださずに見事な撤退作戦だったが、中国の受けた損害はおそらく数百億ドルだろう。

 以後、中国主導のプロジェクトは完全に復活しておらず、債権のゆくえも分からない。つまりこの海外債権は事実上、不良債権化している。リビア政府は形骸として存在しているが、カダフィ時代の債務には無関心である。

 それなのに懲りない中国である。
こんどはアフリカの奥地コンゴへ大々的な進出を決めた。
 コンゴ?
 その昔、ザイールと名乗っていたコンゴは二つの国にわかれ、コンゴ共和国(旧仏蘭西領)とコンゴ民主共和国(旧ベルギー領)だから、ややこしい。

 コンゴ民主共和国は世界11位の面積、首都キンシャサの人口は800万人。若い国ゆえに全体の人口は8000万人の大国である。
ところが熱帯雨林と湿地帯、湖、瀑布、山岳と地理的条件が悪く、交通事情は最悪で運送は河、湖に依拠し、ハイウエィは途中を繋ぐだけ。
それでも輸出の90%がレアメタルである。

 その昔「コンゴ王国」は、ポルトガル(いまのアンゴラ)、フランス(コンゴ共和国)、ベルギー(コンゴ民主共和国)の三つを併せもつほどだった。列強の植民地競争で、ポルトガル、仏蘭西、ベルギーが分け合ったが、19世紀にはベルギー国王の私有地だったのである。


 ▼コバルト産出は世界一のコンゴ民主共和国

このコンゴのなかで、旧ベルギー領の「コンゴ民主共和国」が、現代文明のハイテクに欠かすことができない・銀、銅、ダイヤモンド、コバルトなどレアメタルの宝庫なのである。その金推定埋蔵は26兆ドルに達すると推計される(THE DURAN,2017年6月7日)。

 筆者の少年時代、1960年からの独立戦争を戦ったルムンバ「首相」は武装ゲリラに拘束されて処刑された(61年)。国連のハマーショルド事務総長が搭乗した飛行機は謎の墜落、その後、モブツ大統領という奇妙な独裁者が登場し、鉱山利権を掌握し、国名を「ザイール」と変えた。
無謀で残虐な暴政を敷いて、このレアメタルリッチに君臨した。

 この独裁者=モブツ・セセ・セコはスイスに隠し口座をもち、国民が飢えていても一族は贅沢三昧、大統領特別機を飛ばして欧州を行脚した。大統領補佐官を十名近くも引き連れ、しかも補佐官はすべてが女性だった。ようするにハーレムが移動したようなものだった。

 1996年ザイールは悪政が原因で崩壊し、クーデターで実権を握ったカビルが大統領となった。そのカルビは暗殺され、息子のカビル・ジュニアが大統領を引き継ぎ、二代にわたる長期政権が続いているが、政治的な安定度をかく。米国は政治的大変化が近いと踏んでいる。
 
コンゴの最深奧部に広がるのはカタンガ州で、コバルト鉱山はこの辺疆に位置するのだ。
コバルトの生産でコンゴは世界一である。世界市場の65%を握る。コバルトは「地の妖精」という別名がある白銀色のレアメタルである。
 
カタンガ州は標高1000メートルの山岳地帯にあり、欧米の鉱山企業が経営しているが、武装ゲリラが鉱山を急襲した折は、操業中だった日本鉱業(現在の「JX金属」)の社員等が孤立し、ベルギーとフランスが空挺団を派遣して救出した。

 コバルトは磁気テープ、スピーカ、顔料、高速印刷機(新聞社の輪転機など)の切断(業界ではギロチンという)などに使われ、また自動車エンジンの触媒にも駆使されているため、ハイテク工業界は備蓄を進めてきた。
とくにコバルトが次世代のリチウム電池に使えることが判明し、俄然注目されるようになった。

 しかしお花畑に暮らす日本はこのことに無関心で、当時のコバルト危機で国際世論が沸騰した1978年頃、日本のメディアが騒いでいたのは安西マリアとかの歌うたいの失踪事件だった。そのノー天気は北朝鮮のミサイル危機でも別世界の出来事のように認識しているのだから、お花畑はいまも、昔も替わらない。


 ▼電気自動車のバッテリーはコバルトが必要、だから独占を狙う

 さて、これからは電気自動車のバッテリーでコバルトの大量の需要があるとされる。
 電気自動車のバッテリーと聞いて、きらりと目を光らせたのが中国だった。中国は電気自動車を世界に先駆けて普及させようと懸命である。

西隣のコンゴ共和国(首都プラザビル、人口140万。全体の人口は520万人)やアンゴラに進出している中国企業は、むろん、鉱山事情の照査をしてきた。
キンシャサ、ルカサ、プラザビルなどの拠点を拡げるのは中国鉄路工程総公司や、中国有色鉱業有限公司など、国際的な企業が多く、虎視眈々と有望鉱山を狙い、また鉄道のアクセス建設を中国主導ですすめるためにアンゴラ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国と協議をつづけてきた。

とくにアンゴラに海底油田の鉱区をもつ中国は、首都のラカサに四万人のチャイナタウンがあり、そのうえアンゴラはコンゴ共和国との間に軍事協定がある。そのコネクションは強く、中国はアンゴラルートを経由してコンゴに近付くのだ。

中国はアフリカ大陸の東西を横切る鉄道建設という途方もない野心を抱いて、これが「アフリカ版シルクロート」の決定版にしようと本気でアフリカ諸国に働きかけを行っている。

習近平のコンゴ訪問は2013年三月で、南アフリカで開催されたBRICS会議へ向かう途中にコンゴ共和国へ立ち寄ってサス・ンゲソ大統領と会談している。その前の2006年にも胡錦涛が訪問している。

東隣のコンゴ民主共和国ではコバルトのほかにウランも産出する。このため、中国はコンゴ民主共和国にはウラン鉱脈の開発も打診しているという。そうだ、このコンゴのウランが廣島の原爆に使われたのだ。
 
カタンガ州最大の鉱山は「テンケ鉱山」で、これを操業するコンソーシアム企業には、米国系のフリーポート・マクマロン社(本社フェニックス、アリゾナ州)が58・8%の株主、第二位がランディ社(本社トロント)で28%。残りを地元企業などが保有する。

 突如、中国の「中国モリブデン公司」は、フリーポート・マクマロン社から26億5000万ドルの大金を支払って株式の譲渡を受けたのだ。 


 ▼米国は今後に深刻なカントリーリスクをみている

 米国はカントリーリスクをコンゴの近未来に見ており、第一にカビル政権の腐敗と圧政が続く限り、クーデター、政変が不可避的であると睨んでいる。それゆえに米国系企業は中国に株を売り抜けようとしているわけである。

 米国は「アラブの春」やチェコから始まった「カラー革命」がいずれアフリカ諸国の民主化運動に発展すると踏んでおり、前カタンガ州知事だったカツンビを保護して、カビラ政権崩壊後に備えている。
カツンビは現在ロンドンで事実上の亡命生活を送っている。
 
あるいはカツンビをしそうして、カタンガ州独立運動を背後で操作するシナリオも検討されているらしく、根底にある米国の戦略は、中国のコバルト独占を許さないという深謀遠慮である。
 法外で破天荒な投資のあげく、政権がひっくり返るというパターンはリビアで目撃した。

 さらに日本関連で連想するのはレアアース事件だった。
中国の内蒙古と江西省などでしか産出されないレアアースは携帯電話、スマホに不可欠の希少金属で、中国は日本への輸出を規制する挙にでた。

悲鳴を挙げた日本企業は、第一に昭和電工などが中国に工場を建設し現地調達に踏み切り、第二に供給先をカザフスタンなどに多角化し、第三に代替材料の研究開発を始め、第四にはレアアースのリサイクル運動を強化した。使い古した携帯電話、スマホの回収は意外に進んでおり、この結果、中国は輸出先が先細りして在庫急増し、昨今はダンピングで日本に買って欲しいと要請している。逆転である。

 さて中国がもし、コバルトを政治的武器に活用するとしても日本の備蓄は意外と多い。国家備蓄は24日分、茨城県高萩の倉庫に備蓄されているほか、大量にコバルト需要のある企業は、自社ストックを弐ヶ月から半年分備蓄している。
 中国のコバルト独占という野望は不可能だろう。
    □◇□み△□◇や□▽◎ざ□◇□き◎□◇  
【転載終了】
posted by 三間堀 at 10:22| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月14日

【転載】在韓米国人のエクソダス訓練を開始か 宮崎正弘の国際ニュース・早読み


【転載開始】
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)10月14日(土曜日)弐
        通巻第5478号  
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 在韓米国人のエクソダス訓練を開始か
  すでにマニュアルは配布され、グループ別の集合場所、方法も
**********************

 在韓米国人は20万人以上と見積もられている。
 有事の際の脱出訓練がちかく開始され、集合場所や方法についてのマニュアルが配布さているようである。

 訓練内容は秘匿されているが、まとまって空軍基地か空港に集まり、分散した飛行機で在日米軍基地へいったん避難する。あるいは陸路、釜山へ南下してチャーターした船舶で、日本の港へ接岸後、米国へ待避する。

 日本人が有事に際していかに脱出するかの訓練はまだ行われた形跡はない。情報筋によれば、アメリカの救援機が頼りだというから、あのイラン・イラク危機の教訓はなにも活かされていないことが分かる。

 イラクで湾岸戦争勃発前夜、取り残された日本人はバグダット空港に集まったが、JALは特別機の派遣を拒否した。台湾のエバー・エアーが「お客様は神様です」と言ってチャーターに応じてくれた。

 その前のイラン・イラク戦争のとき、トルコ航空の有志らがアンカラ政府の許可も得ずに、テヘランは救援に向かい日本人を救った。そのパイロットはエルトールル号で救われたトルコ使節団の末裔だった。
「このとき日本に恩返しをしたいと思った」とトルコ人パイロットがのちに語ったことは映画にもなった。でもJALも、ANAも、何をしていたのか。いやそもそも自衛隊機は何をしていたのか?
   □◇□み△□◇や□▽◎ざ□◇□き◎□◇    
【転載終了】
 在外日本人の救出に自衛隊機が赴けるようになったが、「相手国の承認」を条件とする(在韓日本人対象なら韓国の)。北朝鮮危機の大きさ、拉致被害者救出を絶叫しながら、その準備はお寒いようだ。昔の奉職先の海外駐在員の仲間たちは決まって日本政府は何もしないと憤っていた。安保法制で少しは前進した筈だが、世界中に散らばった企業戦士の有事救出策はこれからだ。米国同様とはいかぬまでも、もっと真剣に在外邦人救助を考えねばならない。
posted by 三間堀 at 15:15| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月12日

【転載】サウジ国王がじきじきに訪ロ、プーチン大統領と会見 宮崎正弘の国際ニュース・早読み


【転載開始】
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「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」
平成29年(2017)10月7日(土曜日)弐
        通巻第5467号 
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 サウジ国王がじきじきに訪ロ、プーチン大統領と会見
  これは中東情勢が劇的に変わる前兆かも知れない大事件だ
*********************

 サルマン国王は高齢、めったに外国へ出ない。
 トランプ大統領も、わざわざ外遊の最初の訪問地に選んだのはサウジだった。外交はムハンマド皇太子が担い、二回、モスクワへ飛んでいる。ならば国王がこの時期になぜ、他の国を差し置いてロシア訪問に踏み切ったのか。
 サルマン国王は10月4日、モスクワに到着し、7日まで滞在するとした。5日にはクレムリン宮殿でプーチン大統領とも会見した。

 サウジは冷戦時代、一貫して旧ソ連を敵視した。
ソ連は無神論を建前としたから、イスラム国家の代表を自覚するサウジが、米国の敵を親しくなる筈はなかった。
 冷戦がおわり、中東からソ連の影響力が去ると、サウジは態度を軟化させていた。嘗て犬猿の仲だった両国がそれぞれに接触する必要性が産まれた。

 2015年にロシアは100億ドルの共同プロジェクトを謳い、農業や不動産開発のプロジェクトを推進する協定に署名した。サウジはサウジで、すでにロシアへ10億ドルの投資を行い、もっと増やすと約束している。

 第一にロシアとサウジアラビア両国で世界の石油生産の25%(四分の一)を占めるという事実を把握しておく必要がある。
ロシアはOPEC加盟国ではなく、サウジが進めた原油増産、減算という石油価格調整政策にパラレルにしたがったことはない。しかし、両国は原油市況が半減したことから、お互いの孤立的な立場の補完を模索し始めた。

 第二にサウジアラビアが「脱石油文明」を目指すという「ビジョン2030」に、ロシアは何ほどの関心も示さなかった過去を忘れたかのように、俄然熱心となってプロジェクトへの協力を申し出た。
とくに合弁の石油精製、石油製品生産工場の青写真の実現に向け、ロシアは20億ドル前後の投資の用意があるとした。またアラムコのIPO(株式公開)にも、参加したい旨を表明した。アラムコ株の購入には中国が真っ先に手を挙げている。

モスクワ訪問のサウジ国王に随行したビジネスマンは200名前後という大型旅団で、クレムリンでは両国の経済フォーラムが開催された。ロシアを代表するガスプロム、ロフネフツなどの企業代表が参加したことも注目に値する。


 ▼ロシアは経済協力を申し出て、アラムコ株の購入も材料に、武器輸出を打診

 第三に武器供与の問題である。
 サウジは表面的には米国兵器、とりわけ戦闘機、パイロットの訓練などで米国依存だが、ミサイルに関しては中国軍を国内に秘密裏に駐在させている。

 トランプはサウジ訪問時に1100億ドルの武器供与をサウジ国王との間に交わした。
 この大市場に魅力を感じるロシアは戦車、装甲車、武装ヘリ、各種ミサイルなど総額35億ドルのオファーを提示して、過去数年にわたって交渉を繰り返してきたが成約には至っていない。
 しかし、ロシアはサウジアラビアに対してS400(イスカンダルミサイル)の供与を売り込みの突破口として提示したとみられる。

 米国はしかしながら不快感を表さず、エジプトもインドも、どこもかしこも米国の兵器とロシアとを天秤にかけて外交の武器としており、これは常套手段という認識である。
 むしろ米国がもっとも注目しているのは、サウジとロシアが、石油価格の値決めプロセスにおいて、何らかの密約を結ぶのではないか、と見ている。

  サウジ国王のモスクワ訪問は、以後の石油市場へのインパクトが大きいと米国国務省は分析している。
                ◎◎◎◎
【転載終了】
posted by 三間堀 at 13:37| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月01日

めも)「地経学の復活」の理由6つ マーク・サールウエル 2010年

 
 30年近く前にブームとなった地経学が下火になったのは米国経済が勢いを盛り返したからだった。それがここ数年復活しつつある。表記「地経学の復活」の著者マーク・サールウエルはその理由を6つ挙げた。
《理由》
@中国の台頭に象徴される多極的世界経済の到来
Aグローバリゼーションと「商人による平和」
Bグローバリゼーションの負の側面
C国家資本主義の台頭
D財政危機の時代
E(資源)欠乏の時代(止め)
出所)『新しい地政学』中公新書

 この論文の書かれた時、日中間で尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件が起きていた。そしてその後「地経学」が一気に広まった。

参考)地経学の定義(CFR)
 国益の増進と防衛、さらに地政学的に有益な結果をもたらすために経済的手段を行使すること。
(以上)

ps)一知半解では使えない。私も勉強することにしよう。
posted by 三間堀 at 15:49| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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